2009-11-01

第三回若手コロッセウム報告


今週の月曜日から水曜日にかけて,第三回若手コロッセウムが宮崎にて開催されました。会場のサンホテルフェニックスはシーガイアのなかにあり,シーガイアというエリアはとてつもなく広すぎ。まわりにコンビニもなく,リトリートには最適の場所。今回の世話人は林哲也先生(宮崎大学フロンティア科学実験総合センター)で,林先生の個性が随所に感じられる素晴らしいワークショップでありました。また,情報交換会はバスで移動して,タイレストランで行われました。グリーンカレーおいしかったです。コップンカ! 林先生のホスピタリティーに感動したワークショップでもありました。

会場の熱気は堀口さんのブログにて既に紹介されてしまったので,ピンポイントでの講演内容をご報告です。

教育講演は,東工大の丸山史人先生による「高速シーケンサーの現状と細菌学への応用」というタイトルでありました。普段は丸山先生ではなく,マルちゃんと呼んでいるのですが,そして,結構,飲み会にも行ったりしているのですが,高速シーケンサーは大変なことになっているというのを実感しました。DNAポリメラーゼを1分子くっつけた次世代シーケンサーの紹介とか,ゲノム情報でのデータストレージの問題とか,面白いトピックスを紹介して頂きました。次世代シーケンサーについては,これまでの概念が通用しないということをしっかり認識しました。コンピューターの電気代が2億円以上で,ドライはドライなりに資金投入が必要であることも実感しました。ワークショップでも,トランスクリプトーム解析で接合伝達に関連する遺伝子の動きをダイナミックに解析する研究成果の発表(東北大学・宮腰昌利先生)があり,こういった手法はエフェクターの同定にも応用可能かなと思いました。

もう一つの教育講演は,京都大学の跡見晴幸先生による「第3の生物界アーキア」というタイトルでした。アーキアは古細菌とも呼ばれますが,跡見先生は主に超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1を使って,研究を行っております。跡見先生は中学時代の途中までを米国で過ごされ(シカゴ4年,ニューヨーク7年),いわゆる帰国子女であります。情報交換会の席上で,「跡見先生,かっこ良いじゃないですか」と単純に私が質問すると,日本語が理解できなくて,野球とアメフトというコミュニケーションがなかったなら,米国に戻ったかもしれないとおしゃっていました。日本というか日本語というか,この国の文化圏は難解なのでしょう。まあしかし,それからの研究生活はルンルンであったと思います! 英語ネイティブ,やっぱ羨ましいなあ。。。ちなみに私は福島訛りの英語です! 跡見先生は酵母の世界に11年いて,私も酵母の世界にトータル4年ほどいたので,お互いのバックボーンが共通なので大いに話が弾みました。また,ゲノム情報を有効利用して,超好熱始原菌の代謝経路をひとつひとつ情熱をもって解析していく先生のお姿は圧倒的でした。跡見ワールドによる始原菌の代謝系の美しさに目を奪われるばかりでした。私は薬学出身なので,代謝とか生合成経路の話はたくさん聞いてきたのですが,跡見先生の話は次元が違いましたね。くどいようですが,ミニマムな代謝系のなかに秘められた美しさを,先生独自の視点から丁寧に紡いでいく実直な姿勢に感動しました。また,古細菌という日本語名にだまされますが,転写系・複製系は真核生物そのもので,プロモーターにはTATA box があり,真核生物の原始的なモデル系としても注目されています。先生の酵母(真核生物のモデル系として)での11年間は,超好熱始原菌の研究においても応用可能であったわけで,例えば栄養要求生による変異株取得の方法とか(高熱杉でアンプ耐性で選択できないっ),これまでの研究背景が古細菌領域でも大きく開花したというストーリー展開も,鳥肌が立ちました。

林哲也先生,そしてスタッフの皆さん,本当にありがとうございました!
さあ,次は誰が世話人となるのでしょう。。。

次のコロッセウムに乞うご期待!