2017-09-21

研究者の憂鬱 ー Erratum と Corrigendum の違い ー

 今回,「Microbiology and Immunology誌」に,我々の論文「Bordetella effector BopN is translocated into host cells via its N-terminal residues」(リンク)がめでたく掲載されました。

 しかし論文を読んでみて,なんか違うな〜〜と感じました。よくよく読んでみると,自分の書いた文章と違う箇所があり,また,至るところに誤字脱字が散見されました。

 そこで慌てて,校正の際に出版社から送られてきた「Author Query Rorm (AQF)」を再確認しました。AQF とは,「ここはこのように訂正したけど,OKか?」とか「ここは◯◯にしたほうがいいんじゃない?」「この意味が不明。。。」とか, proof (校正刷り) の段階で,出版社から著者に送られてくる質問表みたいなものです。

 上記論文では ,AQF に15 項目の質問があって,僕はそれにレスポンスして「中身はいちいち精読しなくていいや」と判斷してしまったのです。通常はもっと時間をかけて精査するのですが,メールに目を通すのが遅れてしまい AQF を急いで送り返す必要がありました。

 ほとんどの場合,出版社は AQF で指摘した箇所以外の校正は行いませんし,今は電子化の時代ですから,誤植もほとんどありません。論文は英文校閲会社にも出しておいたので,僕としてはこの段階で訂正する必要もないと思っておりました。

 なので AQF に言及されてない箇所は,多少の訂正はともかくとして,こちらの原稿をもとに電子化されるだろうと思っていたのです。しかし,このように気が緩んでいるときに,大きなトラブルが起きたのです。

 オンライン版を眺めてみると,大きなミスがいくつかあって出版社に連絡をとりました。出版社からは Erratum として対応するとの返事がありました。最初は,

何でこっちが Erratum,出す必要あるんだよ!

ぐらい息巻いていたのですが,よくよく調べてみると,「Erratum は出版社による間違い」で「Corrigendum は 著者による間違い」であることが解りました。恥をかかなくて良かったです(笑)

しかし,下記のような大きな訂正は,AQF に掲載して欲しかった。また,テーブルはレビュー用のPDFから文字認識を使って作成したらしく,激しく文字化けしておりました。テキストファイルで送っているのにも関わらずです。ほんと,こういう手抜きは勘弁してほしいです。ま,出版社を信じた僕も悪いのですが,,,

(出版社側の訂正)
We confirmed that BopN did not affect disruption of type III secreted proteins in the culture supernatant (Fig. 5).

(オリジナル)
We confirmed that the level of type III secreted proteins in the culture supernatant was not affected by the BopN disruption (Fig. 5).

 全然,意味が違いますよね。。。おそらく,新人さんなのでしょうね。校正の仕事は自分の好きな文体に直すことではなく,極力手を加えないで,論文の最終的なクオリティーを上げることだと思います。

 ということで,今年の夏は出版社とのやりとりで悶々とした日々を送っていたのです。出版社側の判斷で,最終的には Erratum ではなく,本文中への一文記載で解決しました。こんな感じです↓

[Corrections added on 8 September 2017, after first online publication: Tables 1 and 2 have been corrected. Parts of this article have also been edited for better syntax without affecting the scientific content].

 ここまでくるのに大分時間がかかりましたが,時間をかけた価値はありました。どんな論文でも愛着は凄くありますから,きちんと元に戻してもらって助かりました。

【追記】
 「Microbiology and Immunology 誌」に関しては,当初,日本でちまちま作業していたのを大手出版社であるワイリー社 (当時はブラックウエル社) に移管してオンライン化するという作業に立ち会ったことがあります。

 僕は細菌学会側の準備委員で,8 人ぐらいがコアメンバーとなってオンライン化に向けて作業をおこないました。それが 2007 年でした。ということで,「Microbiology and Immunology 誌」には格別の思いがあります。欲を出せば,もう少し IF もあがってほしいですね。。。

 そのためにも良い論文を出していかなくては!と思いました。