2013-02-24

第47回緑膿菌感染症研究会:報告

僕の幼少時代は,緑色の鼻水を垂らした子供で溢れかえっていました。この緑色の本体はピオシアニンという蛍光物質で,緑膿菌が産生します。当時,緑色をした鼻水を「ネギっぱな」などと,よんでいました。もちろん病気ではありません。しかし,免疫力の低下したひとに本菌が感染すると厄介なことになります。この菌は抗菌薬に,もともと抵抗性を有しているからです。さらに多剤耐性緑膿菌は,ほとんどの抗菌剤が無効です。

なので,なんとかするために,緑膿菌感染症研究会があるのです。今回は大会長の横田伸一先生に,ご招待頂きました。僕は緑膿菌の専門家ではありませんが,本菌もIII型分泌装置を介して病原性を発揮するので,研究領域での繋がりがあります。話す内容のオチをどうするのかで散々迷いましたが,どうにかまとめることができました。また今回は,第一三共株式会社の皆様に,ランチョンセミナーというかたちでお世話になりました。

また,嬉しい再会がありました。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)から,ボブ・ハンコック先生が招待演者として,よばれていたのです。UBCは僕の留学先です。当時,DNAシークエンサーをもっているラボは少なく,ハンコックラボの機器を借りていました。キャピラリー式ではなくゲル板による電気泳動でした。この板は高価なガラス製で数万円もするのですが,洗っている時に,流しのカドにぶつけて割ってしまったのです。ラボの皆から顰蹙をかいました。ガラス板は米国からの輸入で,時間がかかるからです。

懇親会の席上で,ハンコック先生に「留学時代に,あなたのラボのシークエンサーに助けられた」と言いましたが,「ゲル板を割ったことがある」とは言えませんでした。世界は狭いということを,改めて実感しました。

本研究会には,感染研の大西真先生,広島大学の菅井基行先生,筑波大学の野村暢彦先生,東邦大学の石井良和先生,舘田一博先生も参加されており,はじめての学会とは思えない親近感がありました。特に,高知大学の曵地康史先生には,2日連続で晩御飯をお付き合い頂きました。ありがとうございました!

帰りのフライトでは,別件で北海道にきていた堀口さんと空港で落ちあいました。偶然にも出発ゲートが隣り合っており,飛び立つ合間をぬって缶ビールで乾杯しました。再会して30分もせずに,僕は羽田発のゲートへ向かいました。

まぁ次の再会は,今週の26日なのですけど。。。

ということで,冬の北海道は,研究者で溢れかえっておりました。

会場の札幌医科大学前。雪の回廊のようでした。
札幌へ行った時に,高頻度で立ち寄る信月。


2013-02-17

修士課程論文発表会

先週木曜日に,修士課程の論文発表会がありました。学生の皆さんは,就職活動と研究を両立させながらハードな時期を乗り越え,この発表会にこぎ着けました。ご苦労様でした。

発表会では教授・スタッフからの質問が圧倒的に多く,学生さんからの質問はほとんどないのですが,M1の西村君が質問にチャレンジ?してくれたことは嬉しかったです。スタッフ勢揃いのなかで質問するのは勇気がいりますから,頑張ったと思います。

西村君は久留島君のあとを引き継いで,我々がBspRと命名したグローバルな制御因子の研究を行なっております。徐々にデータが蓄積しつつあります。

最近の金曜日の傾向として,自然発生的にハッピーアワーになってしまうことが多いのです。言い換えれば,ざっくばらんに何かに対して,濃密な時を過ごすのです。最初は小藪千豊はいいんじゃないか,という話からはじまって,西村君のテーマに話が変わりました。その流れで,西村君に「どの学会で発表したいの?」と聞くと,「あわじしま感染症・免疫フォーラム」で発表したいという答えが返ってきました(その後,わたみん家にいったので,そんな話だったと思います...)

「英語でのプレゼンだけど大丈夫なの?」と僕がかえすと「英語で発表したいです」と即答され,西村君の秘めた野望を感じましたね。

データが揃えば,あわじしま感染症・免疫フォーラム」が彼のデビュー戦となります。あと,分子生物学会でも発表したいらしいです。発表したいのであれば,どんどん発表すれば良いと思います。ということで,頑張ってデータを出して下さいね。

西村君の答えのなかに,細菌学会が入っていないのは悲しいです。。。もっとも,これは学会側に理由があります。細菌学会の開催時期は年度末なので,(就職する)修士2年生の発表は時期的に無理なのです。せめて開催時期は11-12月ぐらいに前だおしにしてほしいのですね。かつて理事であったときに,開催時期の変更を提言したのですが,時期をずらすという意見には,他の理事は否定的でした。だから12月の分子生物学会で発表するのは,僕もアリだと思います。

話をもとにもどすと,これからの西村君に,期待します!

それと近況報告です。東京都市大学からの卒研生の今村君は,もうすぐ卒業です。今村君もBopNエフェクターの解析で,良い仕事をしてくれました。薬学部からの卒研生の畑間さん,寺嶋君は4月から6年生になるので,あと数ヶ月研究を展開することになります。また新年度からラボに加わるメンバーは,修士課程の前田さん(理学部から),卒研生の山根さん(薬学部から)です。学生さんの指導は,主に桑江講師が行なっております。今,ラボが何とか動いているのは,桑江講師のお陰です。皆に感謝です。

僕のラボは小さいのですが学生さんが来てくれて,実験の楽しさをわかってくれたら嬉しいですね。もちろん,博士課程で研究を突き詰める生き方もありますが,まずは楽しく自分なりの発見をして欲しいと思います。まずは,楽しく!です。


秘めたる野望をもつ西村君

2013-02-15

DUMAU JIU JITSU TOKYO CHAMPIONSHIP 2013:結果

先日開催されたDumau柔術トーナメントにて,何とか入賞することができました。Jiu Jitsu Priest CUPに続いての入賞で,自分でも本当に嬉しいです。

僕がなぜ大会に出ようと決意したのかは,ココ に書きました。

試合前の減量は辛いのですが,試合が徐々に近づいてくる緊張感は,なんとも言えません。今回は,落ち着いて試合を運ぶことができたと思います。インストラクターのツヨシさんや仲間の指示も耳に入りました。

もちろん反省点もたくさんあります。練習ではなんなく出せる技も,試合では,まったく出せなかったりします。一方,試合に出ることによって,練習においてもポイント重視の戦術を意識するようになります。たとえ負けても,試合にでる意義は大きいと思います。

次の試合は3月初旬です。トライフォース青山からも,8名が参加予定です。また,頑張ります。















2013-02-06

減量生活

今週末に,Dumau Tokyo 2013 という柔術のトーナメントがあります。

僕が出場するスパーフェザー級は,道着込みで64キロなので,試合当日までに62キロぐらいまで体重を落とす必要があります。現在,63キロですから,あと1キロの減量です。

これまで,僕の減量は失敗続きでした。飛びついてクローズドガードの体勢になったときに右足をつってしまい,相手に楽勝でパスされたこともあります。。。

しかしマクロビに食事を変え,10キロ近く体重を落としてからは,減量も楽になりました。ただしビールは大敵です。この麦酒さえ,遠ざけておけば何とかなります。僕の場合,試合の10日ぐらい前から,減量生活に入ります。

減量中の食事は以下のようになります。

朝食: 豆乳ヨーグルトと穀物のフレーク

昼食: 職員食堂で麺類(本日はカレーうどんでした)

晩御飯: 玄米食 + 大豆,野菜,納豆など

これは普段の食事でもありますので,特に変わったことはありません。唯一,アルコールを摂らないこと,午後3時のおやつ(煎餅類)をとらないことが,約束事でしょうか。

減量期間中は,もちろん空腹です。食事という行為に,如何に自分の気分が左右されるのか,よく解ります。

あと,食事以外に変えることは,お風呂の入り方です。長めのお風呂で汗がでてきたら,水シャワーを1分ほど浴びて,再度,バスタブで温まります。冷えて収縮した毛細血管に血液が流れ込みますので,皮膚表面がビリビリします。この感覚が完全に消えてから,再度,水シャワーです。これを3度ぐらい繰り返します。「ロシアンパワー養成法」に書いてあったリラックス法ですが,減量にも多少は効果があります。そして,何よりも熟睡することが可能です。しかし真冬の水シャワーは,気合が入ります。。。

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ブラジリアン柔術のトーナメントには減量がつきものですが,試合に向けて,体が出来上がってくる感覚は楽しいです。少しだけプロアスリートの雰囲気を味わうことが可能です。

そして試合当日,5分間に全てを賭ける緊張感も,普段の生活では味わうことができない一瞬です。

ここまで引き上げくれた仲間のためにも,ベストを尽くします。

トライフォース青山の猛者たちです。



2013-02-05

臭い話。。。


先日,某テレビ局から取材を受けました。なんと水虫の取材だったので,某真菌センターを紹介しました。水虫は白癬菌という真菌によって起きるので,僕の専門外でした。

ところが何日か経ってニオイ菌について教えてくれ,と取材がきました。細菌学者的には「ニオイ菌」という表現は,非常に居心地が悪くなります。悪寒がします。

一般的に,ニオイ菌とよばれている代表菌種には,黄色ブドウ球菌とジフテロイド(コリネバクテリウム属細菌のなかで非病原菌群の総称)が存在します。

汗は本来,無臭です。しかし,汗のなかに含まれる脂質やタンパク質などが細菌に分解されると,ニオイの元になります。酸っぱい臭いは黄色ブドウ球菌で,足のムワーンとする刺激臭はジフテロイドによるものです。特にジフテロイドが分解過程で産生する脂肪酸は,極めつけのニオイとなります。

食生活は汗の臭いにも反映されるようです。動物性タンパク質や乳製品などを過剰に摂ると脂質の分泌が増えるので,汗の匂いがきつくなる場合があるそうです。

以上,臭い話でした。。。

2013-02-02

浅川賞

北里柴三郎博士の生誕日である1月29日に,平成24年度第22回学会賞受賞者特別講演会が,北里大学白金キャンパスで開催されました。

日本細菌学会の最高権威の賞に,浅川賞があります。この賞を支援しているのは,実は北里大学なのです。平成23年度学校法人北里研究所・事業報告書のなかにも,「日本細菌学会浅川賞への支援」という項目で,明記されております。そして以下の記述が続きます。

日本細菌学会の「浅川賞」は,学祖である北里柴三郎博士が創設した賞であり,その意志を継承するため,記念事業の一環として,受賞者への副賞賞金(メダルを含む)の支援を実施することとした。

浅川賞は,旧北里研究所が支援していた賞なのですが,学校法人との統合にともない,学校法人北里研究所として,本賞の支援を継続的に行うことになったのです。

小林六造記念賞も本学が支援しておりますが,平成24年度の該当者はおりませんでした。小林六造記念賞も浅川賞に次ぐ細菌学会の賞ですから,該当者がいない年もあります。また,浅川賞についても,然りです。そうそう簡単には,でないのです。

平成24年度の浅川賞受賞者は,笹川千尋先生でした。笹川先生は,赤痢菌の研究で,非常に質の高い論文をコンスタントに出し続けておられます。先生の業績をこえる細菌学者が,今後でるのか,まったく見当がつきません。今後に続く研究者がパッと思いつかないのです。今回,先生の座長を務めさせて頂きまして,本当に光栄でありました。

懇親会席上では,桑江講師(笹川先生の薫陶を受けて研究者となり,僕のラボにきてくれました),薬学部の岡田先生とともに,笹川先生を囲んで楽しく歓談させて頂きました。僕が驚いたのは,笹川先生はジムで体を鍛えられ,今でも戦闘態勢にあることです。ベンチプレスで60キロあげられる細菌学者は,そうそういないと思います。

先生は帰り際に「今度,対戦しましょう」という言葉をのこされ,颯爽と会場を後にされました。

対戦前にきちんと論文を出しておかないと,
バッサリ切られるでしょう。。。

笹川先生の益々のご発展をお祈り致します。