まあ,研究からは離れていますが,無意味なようで大学の歯車としての使命は果たさなければなりません。
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10年以上も前の話。
ボルチモアのメリーランド大学に短期研修に行った時の思い出。
受け入れ先の手違いで研究者登録がされていませんでした。
IDが発行されるまでには,しばらく時間がかかるとのこと。
受け入れ先の先生が出した結論は,ボランティアの掃除人になれ,と。
そうすれば研究エリアに入ることができるのです。
ボランティアの掃除人は,ほとんどがリタイアしたじいさんやばあさんで,
バイト代の代わりにミールクーポンが渡されます。
それでお昼が食べ放題(4品ぐらいしかないのですぐに飽きましたが)。
しかし,ボランティアになるのでも,きちんと試験がありました。
用務員室みたいなところでつまらないビデオを見せられて,
それをもとに筆記試験。
試験にパスするとボランティアの赤いジャケットが渡されました。
ちょっとうれしかった。
それを着て掃除。
掃除が終わってから,やっと研究。
IDが発行されるまで,赤いジャケットのお世話になりました。
しかも,じいさん,ばあさんには,
「(ボランティアではなく)何できちんと定職につかないのだ,
おまえは!」みたいなことを言われ,
めんどくさいのでシカト。
ていうか掃除してからきちんと働くの,こっちは。
まあしかし,そういった経験を経て論文に繋がった部分もあるので,
諦めないことですね。まあ無意味ではなかった。
無意味と思えることも時が経てば,無意味でなくなる時がある。
それならば,遠い未来に,良い未来につながる
期待感は大切かもしれない。
ボルチモアでは実験もうまくいかなかったのでグレていたわけ。
プールバーで,ビリヤードしていたときに,
ただならぬ雰囲気の紳士が一緒にまぜてくれと言ってきた。
彼が帰った後,バーでたむろしていた人間が
「あいつはすごい奴なんだ」という。
「何しろ数年も捕虜生活を送っていたのだからな」と。
しかも何かの事件に巻き込まれてらしい。
この紳士は地元ではちょっとした有名人であった。
まあ,そんとき,俺は何てスケールの小さなことで,
いじいじしているのかと,思いましたよ。
一見,無意味に思えることも,
そうでないことも綿々と連なって,
ここにいることができるわけ。
しかし,それは本人にしか判らない。
感謝です。