2009-05-27

キャッツキル山の鷲

その小柄な男は,ジムの片隅で,
自分の拳に静かにバンテージをまいていた。
完全にリラックスしていた。
しかし,その眼光は鋭く,
放たれたオーラはジム全体を支配していた。

私は彼に名前をきいた。彼の名前は山本徳郁。
2004年の春であった。

無謀にも私は,彼のような強い男に少しでも近づきたいと思い,
総合格闘技の世界に足を踏み入れたのである。

DREAM.9の結果は敗戦。
彼も言うように「負けは負け」。
しかし,再び舞い上がって欲しい。


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「それに,ある人々の魂の中には
キャッツキル山の鷲がいて,暗黒の谷へ
真逆様に下っても,再び舞い上がって
太陽輝く空間へと消えていくことができる。
その鷲が永遠に谷の中を飛翔していても,
谷は山中にあり,たとえ平原の他の鳥が
舞い上がっても,谷底を飛ぶ鷲の方がまだ高い」

ハーマン・メルヴィル 「モゥビイ・ディック」