2008-10-26

EPISODE II (October 23-24, 関東支部総会)

今回の日本細菌学会関東支部総会(総会長:山本友子先生)は,生命の森リゾートというところで合宿形式で行われました。David Holden 教授(Imperial College of London)と吉森 保教授(大阪大学微生物病研究所)の特別講演も大きな目玉でした。吉森先生のお話はオートファジーに関する研究で以前からじっくり聴きたいと思っていました。一つのテーマをじっくり掘り下げいく吉森先生のスタイル,恰好良いなあと思いました。自分もあと10年で何処まで行けるのかそろそろフォーカス絞らなければなりません。David Holden 教授のお話は,サルモネラのIII型分泌装置に依存した細胞内動態の研究です。SCV (Salmonella containing vacuole)形成のアップデートもできましたし,研究アプローチも大変参考になりました。しかも,Holden教授とは意外なところで共通の友人がいました。情報交換会の席上で

「ケンブリッジ大学でサルモネラやってるピエトロってご存知ですか」

とたずねると

「ピエトロは私の大親友だ」という返事が。。。
「実は私もピエトロの友人なのです」というと,笑いながら,
「日本語で "冗談" って何と言うのか」とHolden 教授からお返事が。

実はカナダ留学時代に,私は共焦点レーザー顕微鏡を使った仕事をたくさんしていました。いまでこそありふれていますが10年ぐらい前は,次世代マシンでした。そこにピエトロがブレットのラボに短期的に滞在して,私がピエトロに共焦点の使い方を教えたわけ。大学のバーで酒を飲んだり,自宅(註1)に呼んで一緒に食事をしたりと,あっというまに親しくなりました。彼は典型的なイタリア人で,乗馬が好きで,恰好良かった。私も夏の間は乗馬が好きだというと(冬はスノーボードにのめり込んでいたので),今度,イギリスに乗馬に来てくれという。「だってイタリアではなく,今,イギリスだろ」と言うと「馬も運んだ」と言う。馬もですか。。。数年前に北里大学の知り合いの講師がケンブリッジに留学することになり,ピエトロに伝えると彼らしい親切ぶりを発揮してくれた。あれから会っていないけれども,ピエトロも元気でやっているらしい。


帰りがけにHolden 教授は,「おまえの親友に伝えておくよ」とおっしゃいました(笑)。暖かさとユーモアも研究者として重要なファクターですね。


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今回は,大学院2年の久留島 潤 君が「腸管出血性大腸菌が産生するEspJエフェクターの機能解析」という研究テーマで発表しました。なんと,久留島君のプレゼンが,今回のBest Presentation賞に選ばれました。これは学生さんに与えられる賞(2演題)なのですが,複数の審査員の先生方の投票にて,久留島君が選ばれました。本当に嬉しいです!  久留島君は幾度となく研究につまずきながらも,ようやく成果が少しずつではありますが,出てくるようになりました。どんなにつまずいても腐らない性格が彼の持ち味。久留島君は来年4月からは博士課程に進学します。何度失敗しようとも,立ち上げって前に進んで欲しい。


いつか,世間が成功と呼ぶに値することを成し遂げたいと思う。
そのとき誰かが,どうやって成功したのかと聞いたなら,
転んだ数より一つ多く立ち上がったのだと答えるだろう。

ポール・ハーヴェイ


註1: 読み直すと自宅と書いてありました(笑)。もちろんカナダですから自宅であるはずはありません。が,大家さんがイギリス人でコンウォールの自宅によく帰るので,その間は庭も家もまるごと使い放題でした。もちろん自分たちの借りた空間しか使いませんでしたが,他人を信じて全部貸してしまう勇気,私にはないですね。大家さんは数年前に他界しましたが,留学当時のある夏の晴れた夜に,「クリコを一緒に飲みませんか」と大家さんの庭に誘うと(私が芝刈りしていました),「そういう良いシャンパンをあけるときには,予めnoticeして下さいね」と言われたことが印象に残っています。