いざ,長崎へとタクシーイングしていた飛行機は,油圧系統のトラブルのために乗客は空港ロビーへ一端戻される。通常は1冊しか単行本を買わないのに,2冊買っておいてほっとする。初めの一冊は,羽田での待機時間,空の上,バスで長崎市内に移動する時に読み終えてしまった。
長崎駅の近くでバスを降り,それから路面電車に乗り継ぎ,宿泊先の思案橋に移動。長崎の人は親切だというのが,第一印象。市電で隣のおばさんに宿泊先の地図を差し出して行き先を訪ねると,すぐに答えが帰ってきた。次は○○ホテルも良いわよとアドバイスも。いざ降りるときになると隣にいたサラリーマンが,先ほどのホテルはあっちの方向ですと教えてくれた。長崎,初めから30ポイント獲得です。
ホテルについてシャワーを浴びて,メールの返信をした後,明日の講義のチェック。夕方になり一人で食事へ。直感を頼りにその辺をぶらぶらしていると,外国っぽいの雰囲気の2人の女性バックパッカーがレストランを探していた。地元の言葉を話すのに,何故か他所からきたような違和感があった。
地元のチェーン店でお寿司を食べ,時間も早いので高台にある孤高のバーへ。 俺が直感で選んだバーは非常に急な石段を上らなければいきつくことはできない不思議なバーだ。酔っ払いはおそらくここで轟沈。初めから難易度が高そうだ。しかもバーだと思ったら,いきなり個人名の表札が普通の玄関に掲げてある。自宅かなと思って,おそるおそる中を覘いてみると,人のよさそうなマスターと視線があう。こうなったら入るしかない。バーの匂いを一瞬でかいでここは大丈夫だと安心する。マスターの作るマルガリータ,おいしかった。高台から見下ろす風景も格別だ。偶然にもマスターも,人とのコミュニケーションには匂いが重要だと持論を展開していたが,気が合った部分である。
しばらくマスターと話していると,さきほどの女性二人が隣のカウンターに座った。長崎にはたくさんのバーがあるのに,偶然というか単純に驚いた。一人のほうは長崎にある離島から,もう一人の女性は近県から長崎にやってきて,交友を温めるための再開であった。いい感じで日焼けしているので,
「島のほうは日差しが随分強そうですね」とたずねると,
「いえ,ハワイから帰ってきたばかりなので,焼けているんですよ」という返事が返ってきた。
これで全ての謎が氷解した。この近くに住んでいるのに,旅人のような感じを受けたのは,彼女の心はまだハワイにあるのだと。それで俺的には違和感が残り,偶然にも長崎で初めて立ち寄ったバーで「違和感」の答えを直接本人から聞くことができた。
これが,つい先ほどの路上で,
「あなたがた二人はなんか変ですよね,なんていうかその雰囲気が。。。」なんて聞いたら間違いなく,変人扱いされるでしょう。研究者と言うものは違和感が大発見に繋がったり,また大失敗を未然に防いだりしますから,日々の生活のなかにも気づきは重要だと思うのです。まあ,俺のクセですが旅先では人の流れに注意するようにしています。
長崎は今日も雨だったけれど,ていうか出張で初めて来たのに雨だけど,人情味にあふれ不思議なバーがあって,明日はがつんといきます。
(写真は,今回,お世話になったいい感じのバーです)