Title: Enteropathogenic Escherichia coli translocated intimin
receptor, Tir, requires a specific chaperone for stable secretion
Author(s): Abe A, de Grado M, Pfuetzner RA, Sanchez-SanMartin C,
DeVinney R, Puente JL, Strynadka NCJ, Finlay BB
Source: MOLECULAR MICROBIOLOGY 33 (6): 1162-1175 SEP 1999
Document Type: Article
Language: English
Cited References: 57 Times Cited: 68留学時代の最後の9ヶ月。本来ならJEMに出したEPECの続きの研究をポスドクと一緒にやるはずであったが,ちょっとウマがあわず,俺は一人でやるからなと自分の時間で研究しました。9ヶ月でできる仕事にポイントを当てると,当時,エフェクターと特異的に結合するシャペロンについて,あまり知られていなかったので,そこを突き詰めてみようと思いました。俺的には期限を最優先したあまりに,はじめから論文になるようなテーマをチョイスしたという後ろめたさもありました。しかし帰国後は,何としても独立したかった。そのためにはFirstの論文が一報でもよけいに欲しかったのです。それに論文数が少なければ,「4年間,随分,長いバケーションだったじゃん」と嫌みを言われるのがオチですから。1999年3月19日に日本に戻ったときには,上記論文はサブミットした段階でしたので不安でしたが,追加実験もなく運良くアクセプトされました。
実は,シャペロンに関する研究は留学先のメインフレームではなかったのですが,シャペロンCesTについてはその後もブレットとナンシーの共同研究で精力的に研究が行われ,結晶構造解析にてかなりの部分が明らかになりました。結果的にはその後のエフェクター特異的シャぺロンの研究に貢献できたと思っていますが,1年と半年あったら間違いなく違うテーマを選んでいたと思います。
任期制だと,どうも研究のスタンスがセコくなってしまいますが(論文数が重要,という意味で),自分たちの研究で感染現象の重要な部分がバーンと解明され,目の前がぱっと明るくなるような研究をしていきたいですね。すごい研究内容でも,何でこんなこと今まで知らなかったの? と思う時が良くあります。答えを知ってしまえばすごくシンプル。だけど,皆,知らなかった。知らないと言う連帯感。そういった負の連帯感は意外にも強いものです。
実は,俺は他人から親しみを込めて「馬鹿ですね」と言われるのが好きなのです。タロットカードでも,THE FOOL(愚者)のカードは,変化や柔軟さ、これから新たなことにチャレンジする,それに向かって強く前進するという意味があります。右脇には犬が吠えています。犬の解釈は様々ですが(カードの意味はその時の感覚によって変わります),崖に向かって一歩踏み出す愚者に対して,「おいおいそれ以上進んだら,崖から落ちて死んでしまうよ。お前は馬鹿か?」と吠え立てているようでもあります。この場合,犬は一般大衆の反応(ごく一般的な意見)と読むことも可能です。しかし,俺の場合,タロットカードのような「愚者」でありたいと思います。ある意味,他人から見れば,馬鹿な研究,しかしこれは知識における負の連帯感を破る研究かもしれません。ということでこれからも愚者であり続けたいですね。
笑う前に笑われろです。