2017-08-30

初めて英語論文を書く若手研究者へのアドバイス (その7) –どこから書いていくのか–

 僕がはじめて論文を書いたときは,論文の記載順に「タイトル」「アブストラクト」と書き上げていきました。当然,論文の全体像も見えないので「アブストラクト」の構成は滅茶苦茶でした(笑)

 今なら「アブストラクト」は,論文が出来上がり,全体像がガッツリ把握できたところで書くようにしております。論文作成の参考書見れば,言われなくても解りますよね。当時の僕は何を考えていたのでしょうね。。。たぶん,何も考えてなかったのだと思います(笑)





論文作成の流れ



 昔の思い出を語ってもしょうがないので,今回は論文をどこから書いていくのか,解説したいと思います。
 
 論文は上図の左側に示されるような項目で構成されます。しかし,前述したように,効率的に論文を書いていくためには,各項目をバラして考える必要があります。

【どこから書いていくのか】
 まず,論文作成に必要なデータが8割ぐらい揃ったところで,「Results」部分の骨子を作成してみましょう。僕の場合,骨子はマインドマップで書いております。今ではこれなしに思考の整理ができなくなっております。

論文骨子は徹底的に練ろう

 また,骨子と並行して大まかな論文投稿先も決定しておいたほうが良いです。それを元にラボでディスカッションして,データの厚みから,自ずと投稿先が決まります。論文「Title」で方向性がざっくりと固定されるので,仮でもいいから「Title」を早めに決めておいたほうが良いかも。。。

 次に,論文の投稿規定にあわせて図表を作成してみましょう。マージンはいくつとか,投稿先によって異なるので投稿規定をじっくり読んでおいたほうが良いでしょう。
 
 フォントは「Helvetica」か「Arial」を使っておけば問題ないと思います。今はどうかしりませんが,ウインドウズでは「Helvetica」が搭載されていないので,「Arial」を指定している雑誌社もあります。まあでも,僕は「Helvetica」で通しております。

 それと図表は,論文に載せる完成度で作ることが大切です。また,ゲルやウエスタンのオリジナルデータは必ず保存しておいてください。出版社から提示を求められる場合があります。

 話を戻しますが,論文クオリティーで図を作成していくことで,追加すべきデータや訂正すべき箇所が見えてくるので,あとあと面倒なことにならずに済みます。論文を書き上げてから,「この図には◯◯のデータを入れるべきであった」とか,再度,実験をやり直すのは効率がとても悪いです。

 なので,比較的はやめの段階で,図は作成しておいて,ボスと情報共有しておいたほうが良いでしょう。そうは言っても,投稿直前で「この実験もやるべきだよ!」なんて平気で言ってくるのも,ボスという生き物の習性です。

 閑話休題。図やテーブルが8〜9割ほど完成したら,いよいよ論文の執筆作業に入ります。

 まず,図を説明するのに必要な「Legends」と実験手法を記述した「Materials & Methods」を書き上げていくことで,徐々に英語脳になっていきます。それから,骨子をもとに「Results」を仕上げていきます。

 論文の中身を書き終えたあとで,ようやく「Introduction」と「Discussion」にとりかかります。イントロは「Results」と並行して書いたほうが良い,という方もおられるかと思います。イントロとディスカッションの構成は対極的なフォーマットにあるので,同時に書いていくほうがまとめやすいです。

 最後に全体を俯瞰して「Abstract」を書き上げます。「References」は Papers のようなアプリで作成したほうが絶対良いです。今どきリファレンスソフトを使用していないラボはないと思いますが,ボスが使っていないのなら自費でも買うべきです。手作業はまったくの時間の無駄で,ナンセンスです。あと,フリーのソフトもあるはずです。

 最後に,「Acknowledgments」には,科研費などのグラント情報を入れておくことも忘れずにしましょう。ボスとか共著者のグラント情報も入れる必要があります。

【まとめ】
  以前にも同じようなことを書きましたが,せっかくなので,まとめてみました。アブストラクトから書いている方は,上記方法も試されてくださいね。

 また,今回の内容も拙著「ライフハックで雑用上等」から,一部改変引用しております。羊土社さんに「変なタイトルにしたから売れない!」と言われたくはないので,飲み会にいくのを1回削って,よろしくお願いします(笑) 

 まあしかし重要なのは,まずは1ヶ月ぐらいで全体像を書き上げる覚悟をもつことです。留学時代,僕はひどい論文を書いていましたが,おおよそ二週間で書き上げてました。「二週間で書き上げるから」とボスに言って,ラボには行かず自宅で執筆のみに集中しました。

 最初,書き上げたものは赤いボールペンで,びっしりと訂正されておりました。アブストラクトなんか,赤でバッテンのみでした(笑)  いや,違います。「Drive your home」みたいなことが書かれてました。ようするに落とし所を考えろ!ということなのでしょう。。。

 ともかくも,原稿を朝出すと,夕方にはボスが訂正稿をもってきます。僕はそれを1晩でなおし翌日の朝にボスに渡します。辛かったけれど僕の論文を見る優先度は上がっていきました。論文作成は早い!というアピールをしなければ,ビッグラボでの生き残りは困難となります。

 結局,そう言ったやり取りをすることで,僕のやり方が確立されていったのだと思います。試合に負けて,グランドを走り込んでも野球はうまくならないように,実験のスキルと同じぐらい,論文を書くというスキルも体得する必要があります。

 このブログが何らかの参考になりましたら,僕も嬉しいです。