2017-08-23

初めて英語論文を書く若手研究者へのアドバイス (その3) イントロ編

これまで 2 回に分けて,「Results」部分の書き方を解説してきました。今回はイントロの書き方について,解説していきたいと思います。

我々のラボでは,ボルデテラのエフェクターの研究を行っています。

しかし,多くの人々は何のことを言っているのか,さっぱりわかりませんよね。

このさっぱりわからないところを誰にでも理解できるよう解説するのが「イントロ」の役目です。


イントロの書き方も流れがあって,覚えてしまえば結論より簡単です。

大前提として,大きな部分から徐々に研究の目的に絞り込み,他の情報なしにイントロのみでこれから読んでもらう論文について,読者にざっくりと知ってもらうことにあります。

たとえばボルデテラのエフェクターの論文なら,「ボルデテラ」って何?
から,はじまります。

ボルデテラ属細菌はグラム陰性の好気性球桿菌であり,代表菌種として,百日咳菌,パラ百日咳菌,気管支敗血症菌などがあげられる。

これで,ボルデテラって細菌の一種であることがわかります。次に,上記細菌について,もう少し解説しましょう。

百日咳とパラ百日咳菌(厳密には2系統に分類)はヒトに百日咳を起こし,一方,気管支敗血症菌は,幅広い動物種に慢性感染を起こすことが知られている。

これで,どんな病気をおこすのか,ざっくりと提示することができました。

次に,これらのボルデテラ属細菌は二成分制御系とよばれる制御系に多くの病原因子が支配されていることを解説します。そのなかには,毒素,付着因子,III型分泌装置などが含まれることを説明します。

我々の研究のフォーカスはエフェクター(これについてはもう少し待って下さい)なので,III型分泌装置の解説をします。

III型分泌装置は針状の構造をした分泌装置で,エフェクターと呼ばれる病原因子を宿主細胞のなかに注入する。

ここで,エフェクターが宿主細胞に移行する病原因子であることを,ようやく解説することができました。

冒頭部分で,「我々のラボではボルデテラのエフェクターの研究を行っています。」と説明しましたが,これを丁寧に解説して誰にでも解るようにするのが,イントロの役目です。

III型分泌装置については,どのようなメカニズムで感染細胞にエフェクターを注入するのかもう少し解説してから,細胞に注入されるエフェクターについて具体的に解説していきます。

イントロでは自分たちだけではなく他グループのリファレンスも入れて,たとえばBteAなら,このエフェクターが幅広い培養細胞に細胞死を誘導すること,N末端の48 アミノ酸残基が宿主内移行に必要であることを,順次リファレンスを入れながら述べていきます。ここではフェアに書いていきます。

けっして「競合グループは薄汚い連中だ」なんて書いてはいけません(笑)

エフェクターBteAで明らかになっていることを洗いざらい述べてから,ここからがキモなのですが,じゃあ何がわかっていないのか? 明らかにすべきことをクリアに述べていくのです。

そのために我々は,◯◯の解析手法を用いて,BteAの細胞傷害活性に関与するドメインを解析した,などについて軽く触れておきます。詳しいことはマテメソに書いて,ざっくりとプレゼンすることで,読者に論文の基礎知識を詰め込んでもらいます。

最後は,お決まりの文章が並びます。たとえば,

In this study, we investigated the precise mechanisms of the BteA-mediated necrosis and the significance of BteA functions for Bordetella infection.

Herein, we report that BspR is translocated into the host cells via the T3SS and has the ability to localize into the nucleus.

Here, we report that BspR is involved in the regulation of various BvgAS-regulated genes encoding the T3SS, filamentous hemagglutinin, pertactin, and adenylate cyclase toxin.

 などなどです。あとは論文を読んで貰えばいいので,長々と結果の説明はしません。

 【まとめ】
 イントロはものすごく大きな部分から解説していき,徐々に研究の焦点となる部分に落とし込んでいきます。

また,研究対象について,どこまでが明らかになり,どこが不明なのか,フェアに書いていく必要があります。リファレンスのほとんどはイントロに集中するでしょう。

最後の部分は,解析手法をざっくりと述べてから,上記のようなシメで「Results」部分に移っていきます。

イントロもコツを掴めば書くのはとても簡単です。関連論文をたくさん読むことで,おおよその流れは理解できるかと思います。

 書けそうな気がしませんか? 

 頑張ってください☆