2012-11-14

細菌学と網羅性

現在,感染症関連の本を執筆しています。細菌関連の仕事をまとめるのは,大変だなと思いました。また,研究を遂行する上でも「感染現象の複雑性」は,時には大変な困難となって,目の前に立ちはだかります。

我々のラボでは,Bordetella 属細菌(百日咳菌などがここに入ります)の病原性解析を行っています。そのなかでも針状の分泌装置を使って,宿主細胞内に注入される病原因子について,研究を行っています。

これまで宿主細胞に注入されるBopCは,細胞傷害をおこす病原因子であることがわかってきました。しかし,宿主内に移行する病原因子は他にもあるのです。BopNという因子は,核まで移行することがわかってきました。こちらはIL-10産生を誘導します。異なる性質をもった因子が,異所的に機能することで,病態発症に関与するのです。

「自分は◯◯の専門家である」と自負した時点で,この領域では「死に体」を意味します。病原因子の機能にあわせて,どこまでも学問領域をひろげて行く覚悟が必要です。まあしかし人材も限られていますから、病原因子の数だけ増やすわけにもいかず,個々の研究者にマルチタレント性が要求されます。

網羅性があってはじめて,感染現象の全体像が見えてきます。もちろんBopN解析に人生を賭けるという道もあるのですが,僕はBordetella属細菌の感染症現象を突き詰めることに,興味があります。

しかしウラをかえせば、感染現象には,まだまだ未知のお宝が眠っているのです。

無理やり結論づけると,我々と一緒にほっくり返しませんか?

学生さんも,随時募集ちうです。