2019-09-21

ストロングスタイルの秘湯,大深温泉に行ってみた

八幡平の麓にはいくつかの名湯があるのですが昔ながらのストロングスタイルを堅持している温泉は,おそらく「大深温泉」のみだと思います。

大深温泉の源泉かけ流しの湯船。
なぜストロングスタイルなのか?




それは地熱を直接利用したオンドル小屋だからです。他の温泉のオンドル小屋はパイプを通したりして熱を間接的に利用しているのがほとんどです。一方,大深温泉は地熱を直接利用しているのでゴザの引いてある場所によっては寝られないぐらい熱かったりします。
地面の温度をよくよく吟味してから寝床を確保する必要があります。

大深温泉のオンドル小屋。この日の1号棟の湯治客は僕を含めて3人でした。

このへんが大深温泉は「ストロングスタイルのオンドル小屋だ!」という所以です。まあしかし初心者には敷居が高いのでオンドル小屋1号と2号に別れております。1号のほうは地熱が低くて初心者向きです。2号のほうはプロコースで長年通っている湯治客はこっちに宿泊する場合が多いです。

オンドル小屋 1号と2号。手前がプロコース。

ゴポゴポ湧き出る温泉のなかにオンドル小屋がたっております。柵と小屋の間に温泉を利用した蒸し器があります。サトウのご飯とかここで蒸して温めます。

また,大深温泉をストロングスタイルにしている第二の特徴として,
「それは基本,雑魚寝である」
ということです。人類は分け隔てなくすべからく雑魚寝である!という点において他の温泉にはない強さを誇ります。

こういった2つの特徴を頑固に守る温泉なので,まあまあというか全く若い人向きではありません。でも入湯税をあわせて「2150円」(2019年9月現在)という破格な宿泊料は,他の温泉と比べてかけ離れている意味においてもやはりストロングスタイルであるということができます。

なぜ,湯治客はストロングスタイルに惹かれるのか?

僕が驚いたのは湯治客の皆さんは大きなボックス(食材とかお酒とか食器とかガスコンロとか,,,)をたくさん運んできて,それぞれのプライベートライフを楽しんでいるということです。たとえば食事にしてもかなり本格的に用意しております。各自がガスコンロを持参してきて持ち込んできた食材を自分の家にいるような感覚で調理していることです。ほとんどここに滞在しているヌシの方もおられます。

ちょうど1号棟に泊まったときは福島から来られているS様ご夫妻しかおりませんでした。その晩はS様のテーブルに呼ばれ美味しい晩ごはんと日本酒をご馳走になり,岩手山から裏岩手縦走路を抜けてきたせいか一気に睡魔に襲われオンドル小屋で深い眠りについたのでした。

翌日はあまりの居心地の良さに,山に登る気力も失せてしまい延泊。朝から源泉かけ流しの温泉に入り,ついでに青い大きなタライで洗濯をして身も洋服もさっぱりとしました。衣類のほうはオンドル小屋の地熱パワーであっという間に乾きます。

朝ごはんを作っている方,山から拾ってきたキノコのアク抜きをしている方,それぞれが好きな時間を過ごしております。

基本,ストロングスタイルの大深温泉は放置プレイである!

このへんがコアな湯治客が訪れる所以かと思われます。

沢から取り入れた水はとても冷たいので天然の冷蔵庫です。

その日の晩もS様のテーブルに呼ばれ,鯉のあらいを肴にして地べたにごろんと転がしておいた日本酒で乾杯しました。ほどよい温度の日本酒はどこまでも優しくて,また,ご夫妻が作られる美味しい料理に大感激しました。この場をお借りして御礼申し上げます。

あなたがもし温泉に行ったのなら,大体のことは想像がつくでしょう。温泉に入って浴衣に着替えて夕食のお膳がきます。きっと右側のほうには固形燃料で温められた地元のシカとかイノシシの肉があるはずです。左の方には刺し身とか天ぷらとか,,,あと地元でとれた山菜とか,,,瓶ビールの銘柄は,アサヒかキリンが聞かれるはずです。

いつしか非日常を楽しむ温泉もすっかりマトリックスの世界にいることにあなたは愕然とするはずです。もしそれに気がつけばの話ですが,,,

もし,あなたにも昔のようなストロングスタイルを求める温泉魂があるのなら大深温泉はきっと優しく,ときには厳しく迎い入れてくれると思います。

ストロングスタイルを常に模索されておられる山ヤの皆さん,沢ヤの皆さんには大深温泉はまさに桃源郷です。

大深温泉をよろしくお願いします!!!


人の優しさに思い切り触れて大深温泉をあとにする筆者。