2019-03-12

日本語の学術論文におけるフォントの最適解 その2:イタリック体と斜体は同じではない

一つ前のブログで,フォントについて自分なりの最適解を書いたところ,「ワードではヒラギノ角ゴでも斜体になる」との話が持ち上がりました。試したらヒラギノ角ゴも,一応,斜体にはなるのですね。

ここで少々混乱してしまうのは,「イタリック体」と「斜体」は,本来,別物であると言うことです。


「イタリック体」とは筆記体に似たフォントのことを指しております。一方,「斜体」とは文字通り,通常のフォントを機械的に斜めにしたものです。英語だと「oblique」と呼ばれています。

マイクロソフトのワードやパワポなどのソフトでは,ヒラギノ角ゴが斜体になります。たとえば下図のように,ヒラギノ角ゴを指定した「Bordetella」を選択し,赤字で囲った「I」ボタンをクリックします。

ヒラギノ角ゴはイタリック体を持たないので,ソフトウエア的に文字を斜めにして画面にあらわすのがマイクロソフトの流儀です。

もちろん,Helvetica Neueを選んでから「I」ボタンをクリックすると,こっちのフォントはイタリック体をサポートしているので自動的に本来のイタリック体が選択されます。なので,こういった親切心から「イタリック体」=「斜体」という誤解が生まれやすいのかも知れません。

イタリック体と斜体は本来異なるもの
マイクロソフトのワードがリリースされた当初は,フォントのバリエーションがあまりなくて,本来イタリック体で書くべきところを,「イタリック体不在」ために,機械的に斜めにしてそれで体裁を保っていたのでしょう。

一方,黎明期から,美しいフォントとレーザープリンターを利用できたアップルのソフトではヒラギノ角ゴを斜体にすることができません。これはこれで不便なのですが,フォントマニアのジョブス的には「擬似的(ソフトウエア的)に斜めにするんじゃなくて,ちゃんとイタリック体を使え!」ということなのでしょう。

結論として,ワード環境で文書を作成する場合,「ヒラギノ角ゴ」「游ゴシック」などのイタリック体をサポートしていないフォントにおいてもソフトウエア的な「斜体」で解決します。まあそれは,厳密にはイタリック体ではないのですが,使い方次第だと思います。

「イタリック体」と「斜体」は異なるということを知っておくと,人生の幅が0.1ミリぐらい,広がるかも知れません。。。