2018-10-19

最強エディター Scrivener を実験ノートに利用する3つの理由

 実験ノートは重要です。当たり前ですが,,,
ただし僕は字が下手で,自分の字があまり好きではありません。そこで,プロトコルをScrivener 3 で作成して最終的に紙媒体でファイリングしております。
 ということで,僕なりのノート術を披露したいとい思います。


【はじめに】
 Scrivener は作家や脚本家などが大量の文章を処理し,それをまとめ上げるために作られたソフトウエアです。羊土社さんの「もっとよくわかる!」シリーズを依頼されたときに,どのエディターを使うのか散々迷って,これにたどり着いたという経緯があります。下記がScrivenerのwebサイトになります。

https://www.literatureandlatte.com/scrivener/overview

もともと大量の資料を扱うソフトウエアであり,それなら「実験ノート」にも利用できそうだなということで使い始めました。

【1.  なぜ,Scrivener なのか?】
 まず,プロトコルの素材となるマニュアルをどんなかたちでも Scrivener に取り込めるからです。たとえば,Web からダウンロードした PDF はドラグして図のようにフォルダ内に取り込むことが可能です。取り込んだあとは「013 PCR 断片の精製」とか,分かりやすいような名前に変更します。

PDFのマニュアルを取り込むことも可能です。Gateway テクノロジーのPDFマニュアルを一部引用。

 Web サイトの URL をドラグすると,そのまま Web サイトが取り込まれます。ほとんどのマニュアルは,企業が Web サイトで公開してますから,製品マニュアルやプロトコルはラボになくても大丈夫です。

Webサイトを取り込んだときは,各項目のクリックが生きております。宝酒造のサイトを一部掲載。

 このように Scrivener は,素材となる Web 情報を手っ取り早く集められるので愛用しております。さらに,それらをファイリングする能力にも優れております。これらの操作はEvernoteでも可能ですが,Scrivener では「実験ノート」という一つのファイルを作ってその中で整理するというかたちが気に入っております。また,アプリの形体としてはエディターなので,ストレスなく文書入力が可能です。動作が軽快であるというのも Scrivener を使う理由でもあります。

段落間隔の「後」を8.0ポイントからゼロにする
他の文書をコピペして,それを元にプロトコルにする場合は,上記のようにコピー元の段落間隔が生きている場合があります。上記では,段落間隔の「後」に8.0ポイントを開けるという指示です。たとえば,リターンキーで改行したときに,段落間隔が空いているとプロトコルとしては間延びした感じになります。このような場合は,Scrivener の「メニュー項目」から「段落」を呼び出して,0 にすることで解決します。
 1.0 行にしているにも関わらず行がガタガタの場合は,「段落間隔」が悪さをしている可能性があります(笑)

【2.  ファイルの整理がラク】
 たとえば,「013 PCR 断片の精製」というファイルをコンピューター上で作成する場合は,同じフォルダ内には同一名のファイルを置くことはできません。Scrivener の場合,同じファイル名を記載しても,上記のように並べることが可能です。
 「013 PCR 断片の精製」のファイルが2つあるのは,1つは Web からダウンロードした PDF マニュアルで,もう一つは,その PDF マニュアルから自分なりに作成したプロトコルです。「013 PCR 断片の精製」というタグに複数のファイルが収められている感じです。
 ざっくりと俯瞰するために,割り当てた番号(ここでは 013 )は,実験の順番になっております。内部検索でプロトコルを探すことも可能ですが,実験順に並んでいたほうが探しやすいです。Scrivener は脚本家も愛用するアプリなので,ストーリー(研究者の場合は実験順序)に沿ってまとめることが可能です。このファイルの順序は並べ替えることもできるので,このへんの柔軟性も気に入っております。

【3.  紙媒体との親和性が優れている】
 Scrivenerで作成されたプロトコルは,プリンターで印刷して使用します。印刷されたプロトコルを雛形として,実際の実験をプリントアウトされた紙に書き込んでいくのが僕のスタイルです。Scrivenerをすごく好きな理由として,プリントアウトしたファイル右上に「ファイル名と日付」が印刷されるからです。なので,いつ実験したのか,容易にトレースが可能です。

プリントアウトしたものに実験内容を記入し,28穴パンチでファイリングしております

 さらに,プラスの「Auto number」というスタンプでナンバリングしています。実験が終わったら 28 穴パンチで穴を開けてファイルに閉じています。ファイルがバラバラになっても分かるように,このスタンプは重宝しております。もっともラボによっては(バラバラにならない)ノートに記入するスタイルかもしれませんが,効率重視で考えると普通のA4用紙にプリントアウトしたものを実験のプロトコルとして利用して,最後に28穴パンチで穴をあけてファイリングしたほうが便利です。

昭和な雰囲気が漂うスタンプです。

【まとめ】
 現在,文書作業のほとんどは,Scrivener で行っております。Evernote も資料の取り込みに利用しておりますが,Scrivener ではプロジェクトごとにファイルを作って,その中に様々なファイルを入れ物事を整理していくかたちが気に入っております。
 たとえば,細菌学会の仕事は「細菌学会」というファイルを立ち上げ,あるいは論文を書くときには,「論文」というファイルを立ち上げます。このファイルの切替えが僕の中での仕事の切替えでもあり,このメリハリのある環境が好きなのかも知れません。
 Scrivener のファイルはドロップボックス上に保存することで,大学の Mac mini で仕事をしたあとに,自宅の MacBook で仕事を続けることも可能です(ま,そんなにしませんが)。
 というわけで,久々に Scrivener の使い方を説明しました。また,コンピューターの環境をワードから高機能なエディターに変えるだけでも仕事の効率は上がるので,オススメします。