1 新型コロナウイルスに対してBCG生ワクチンは有効なのか?
medRxivに公開された査読前の論文です。
論文タイトル: Mandated Bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.05.20054163v1
この論文では,新型コロナウイルスの感染者数・死亡者数の報告と,BCGワクチン接種国とそうでない国との比較を行っております。
版権の関係で図をコピペできないのですが,BCGワクチン接種国における新型コロナウイルスの感染者数ならびに死亡者数のグラフのプロットは,BCGを接種していない国々と比較して,なだらかです。これらの結果を踏まえて,BCGワクチンの接種はCOVID-19 に対して有効であると結論づけております。
臨床試験に基づいたわけではないので,今後の検証が必要ですが,我が国で新型コロナウイルスによる死亡者数が少ないのは,実は,BCGワクチンの恩恵を受けているのかも知れません。
新型コロナウイルスのワクチンが開発されるのはまだまだ先です。新型コロナウイルスに対する新たな薬剤・ワクチンができるまでのバックアップとして使えるように,実際にBCGの臨床試験を行うことが大切かもしれません。
また,現在のBCGワクチンは乳幼児を対象としたものです。成人が接種してしまうと,本来,受けるべき乳幼児にワクチンが回らないことも考えられます。このへんの整備も必要ですが,少し希望がもてる情報です。
2. 日本の遅すぎた感染制御政策が,かえって良かった!
ん,なんのこっちゃ? と思ってしまうでしょう(笑)
論文タイトル:Epidemiological Tools that Predict Partial Herd Immunity to SARS Coronavirus 2
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.25.20043679v1
この論文では2つのタイプのSARS-CoV-2が登場します。
S タイプ: SARS-CoV-2の初期バージョン(ここでは弱毒株とします)
L タイプ: 初期のSARS-CoV-2に変異が起きてウイルスの複製速度がアップしたタイプ。ウイルスの複製速度がはやいので,Sタイプよりも伝播能力が高いとされます(ここでは強毒株とします)
皆さんも,新型コロナウイルスに対する感染制御について,日本政府の後出しジャンケンのような決断にイライラしたと思います。
この論文によると日本政府は3月9日まで,一部の地域をのぞく中国からの旅行者を受け入れておりました。その結果,S タイプのSARS-CoV-2が日本に入り込んで,それで,日本はうまい具合に集団免疫をつけることができたという仮説です。結核でも弱毒株のBCGワクチンを接種することで,本来の結核菌がきても身体を守るという原理と一緒です。
ヒトへの伝播をしていく過程で,SARS-CoV-2に変異が起きて強毒株であるLタイプが出現します。しかし,日本においては弱毒株であるSタイプに晒されていました。あとから入ってきた強毒株に対し免疫を獲得していたので,他国と比べて,感染者数ならびに死亡者数の増加がマイルドであるという,かなり大胆な仮説です。
これが本当だとすると,SARS-CoV-2に対する集団免疫は可能ということになります。このへんは,どれぐらいの日本人が抗体をもっているのか? 精査する必要があります。
【まとめ】 新型コロナウイルスに関しては暗いニュースばかりですが,BCGワクチン,パンデミックになる前に日本にやってきた弱毒タイプのSARS-CoV-2感染による集団免疫。これらの良いことがミルフィーユのように重なり合い,今の日本の状況を作り出しているのかもしれません。
上記の論文は仮説の段階ですが鬱々としたニュースだけではなく,明るいニュースもあることを,皆さんにお伝えしたかったのです。
皆さんのご自愛をお祈りしております。