2014-08-11

過去の山行記録: 201408 黒部峡谷の水平歩道を歩く

2014年8月の山行記録となります。

黒部の水平歩道から下ノ廊下へと続く回廊は,年間を通して一ヶ月ぐらいしかあいておりません。

阿曽原温泉小屋のHPでルート状況を知ることができます。昨年,全区間を歩いたのですが,11月ということもあり誰にもあいませんでした。下記の記録は,そのための下見ということになります。



夏季休暇を利用して黒部峡谷を散策しました。

二十数年前に読んだ「山と渓谷」に,黒部峡谷の「下ノ廊下」についての記事がありました。「断崖絶壁をコの字にくりぬいた道が,峡谷にそって延々と続いていく」という内容に,日本にもこんな秘境があるのか?とひたすら感動しました。それ以来,黒部の下ノ廊下,そのなかでも「水平歩道」は,僕のなかでの桃源郷であり続けました。

夏休みに娘とどこへ行こうか?と旅先を考えていました。今回は2人旅です。そこで,水平歩道の入り口だけでも見てみたいと思いました。黒部峡谷入り口の欅平駅まではインディー・ジョーンズばりのトロッコ電車も走っているし,秘境祖母谷温泉の露天風呂もいいかもしれないと思いました。あくまで水平歩道は,旅のオプションとして考えていました。

押し入れから登山道具を取り出し久々に山行の準備。20代の頃の単独行を思い出しました。あの頃は,「孤高の人」を読んで,男は単独行だ!と思っていました。

GPSを利用するために充電パックが必需品となりました

閑話休題。東京駅のノースコートにある紀伊國屋で弁当を買って新幹線に乗り込みました。越後湯沢に辿り着いて日本海に沿って特急はくたかで移動しました。魚津駅で乗り継いで宿泊地である宇奈月温泉につきました。

宇奈月温泉駅。ちなみにトロッコ電車は隣にある宇奈月駅から発車します
かなり使い込まれた計器です

翌日,宇奈月からトロッコ電車にのって欅平駅に到着しました。晴れていて,絶景を楽しみながら遡上しました。

欅平駅までは黒部峡谷沿いにすすんでいきます

ビジターセンターで少し休んだあと,さっそく水平歩道へと向かう登山口を歩きはじめました。かなりの急勾配でしたが,300 m 登れば水平歩道の入り口に到達できることがわかっていたので,気分的には楽でした。途中で少し休んで,遠くの山にみえる雪渓を楽しみました。

標高922mからの風景。
しばらく歩くと道が開けて,唐突に水平歩道が現れました。ここから標高1000mの等高線にそって,仙人谷とよばれるところまで13キロの道が水平に続いているのです。仙人谷からは日電歩道に接続し,黒部ダムまで行き着くことが可能です。これらの道は関西電力の送電線の保守点検に,今でも使用されている重要なルートです。ちなみに欅平から黒部ダムまで続く30キロの断崖絶壁のルートのほかに地下電車が走っていますが,一般には公開されておりません。

突然,水平歩道はあらわれました

今回の旅の目的は,この水平歩道を少しだけ見学して,あらためてアタックしようと思っていたのですが,いざ遥か彼方まで続く水平歩道に足を踏み入れると,「少しだけこの先を見てみたい好奇心」に駆られました。そこでトロッコ電車にもどる時間を考慮して,行けるところまで歩いてみようということになりました。

峡谷から吹いてくる風は,とても気持ちの良いものでした。その一方で,断崖を切り抜いて作った道はかなりの神経を使いました。僕が登ったときは晴れていたのですが,雨の日は絶対に行きたくはない道です。

山肌に削られた一筋の道を慎重に歩いていきます

歩道のある部分は鉄板で補強されています。滑りやすい雨の日は歩きたくないですね。

約3時間あるいたところで,欅平まで引き返す時間となりました。それでも雪渓を迂回するためのトンネルをくぐり抜けるところまで,辿り着きました。あと数キロ歩けば,水平歩道の中継地点である阿曽原温泉でしたが,深追いは禁物です。FieldAccessによる記録をオフにして,欅平まで戻りました。

水平歩道にはトンネルがいくつかあります。照明が必要です。これは次の画像にある大きな雪渓の下を通過しています。トンネル内は氷水が流れているので,防水の登山靴が必須かもしれません。

この雪渓の地点(志合谷)で引き返しました
ここまできて折り返しました

欅平駅について,娘はメロン味のかき氷とブルーベリーパンを美味しそうに頬張りました。僕はイチゴ味のかき氷とホットコーヒーで,水平歩道の緊張感を解いていきました。心地よい徒労感とともに,トロッコ電車にゆられて宇奈月温泉へと戻りました。

ダムで利用する大きな機材は解体して運搬します。大変な作業ですね
宇奈月駅はダムへ向かう男達で溢れかえっていました。
以上が今回の山行でした。デジカメの写真を眺めてみると,よくこんな危険なところを歩いたなと,恐怖感がこみ上げてきました。「好奇心」で多くの探検家が命を落としています。それと同時に多くの未開の地が明らかになりました。研究もその先を見てみたい好奇心から,たくさんのことが明らかになりました。

まあしかし,無事で帰ってこれて良かったというのが,本音です。

FieldAccessでのログでは片道約10キロとなっていますが,地図をみるかぎり5キロぐらいでした(おそらくGPSのブレまで距離に入ってしまったのでしょう。まあしかし,実際の地点をかなり正確に示してくれるので,その利用に支障はありません)。このアプリでは,あらかじめ日本国土地理院の地図をダウンロードしておいて,iPhoneのGPS機能でログをとります。バッテリー消費が激しいので充電パックは必須です。