2009-09-12

The 9th Awaji International Forum on Infection and Immunity

The 9th Awaji International Forum on Infection and Immunityが昨日,終わった。
本日,久留島君といっしょに食堂に行くときに,彼が「今回の学会はすごく長く感じました」と言ってきた。俺は「長く感じたの? それは良かったなあ」と彼に返事をした。テレビ番組で島田紳助が,「ヒトはチャレンジし続けないと,月日が流れるのがすごく速く感じるようになる」ようなことを言っていた。脳科学でも,脳の処理能力をあげるために,パターン化された事象は過去の情報を呼び出して,見たような世界を脳内で創り出していることが明らかになっている。ようするに「あなたが見ている世界と,私が見ている世界は,全く違う」のである。パターン化された日常は,過去のパターンのつなぎ合わせで構築可能であるから,リアリティーが欠落しているのでしょうね。逆に自分にとって初めての体験は,記憶にないから,脳がフル活動して,情報処理を行うので,長く感じてしまうのでしょう。

随分脱線したが,彼にとって初めての国際学会で,しかも,細菌,ウイルス,寄生虫の濃い内容のプレゼンが一日中続いたなかで,時間を長く感じられたのは,新しいことを一生懸命理解しようとした証拠であるかもしれない。また,嘉糠研の新澤君や自分と同じ年齢の若い奴らとのディスカッションも大いに参考になったのではないかと思う。

私はと言えば,自然免疫の領域が少しずつ解りかけてきた感覚があった。感染免疫の世界に足を踏み込んだのは,つい2−3年前の出来事。何しろそれ以前は,感染免疫のほうにはタッチしたくないと思っていたぐらいであった。しかし,百日咳の感染を理解するのには,IL-10を介した感染戦略を理解する必要があった。免疫という私にとっては哲学に等しい学問を一つ一つ,自分なりに解体していくことによって,自分が納得できる感染免疫をやれば良いのではないかと思い,自然免疫の世界に足を踏み入れる決断をした。サイトカインも宿主側因子であり,Rhoやアクチンと同じように,捉えればいいと。。。ここまで運んでくれた桑江君,永松さんに感謝しつつ,マニュアルモードで大気圏に突入しつつあります。

まあ,私にとっては長いような短いようなAIFII 2009でありました。

今回の学会で感動したのは,私をさんざん苦しめたスパゲッティー・バグの機能が明らかになったことです。

Segmented Filamentous Bacteria Prevent Colonization of Enteropathogenic Escherichia coli O103 in Rabbits

The Journal of Infectious Diseases 2000;181:1027–1033

留学当時,私はウサギに感染する rabbit EPEC (REPEC)を用いてIII型分泌装置に依存した下痢発症機構の解明を行っていたが,あるウサギはスーパーサイヤ人なみに,このREPEC感染に対して抵抗性を示した。そこでスーパーサイヤ人化したウサギを徹底的に調べてみると,腸管上皮に気持ちの悪い菌がうじゃうじゃいたのである。この菌はSegmented Filamentous Bacteria (SFB)というらしいが,私は単純にスパゲッティー・バグと呼んでいた。この菌が現れると私の実験は,全ておしまい。この菌のために何度,実験を失敗したことか。。。しかもこいつは培養不能で,予めこいつを排除して実験を組むのが非常にやっかいであった。

この菌がいると感染が成立しないというのは,私にとっては受け入れがたく,しかし,REPECのスーパーサイヤ人化とSFBの出現は一致していた。面白い内容であったが,我々は現象論で終わっていた。ファーストオーサーは非常に興味を示したが,私はこれ以上,深追いをしたくはなかった。それで彼女はそのままSFBの研究を続け,私のほうはエフェクター特異的シャペロンの研究に没頭するようになった。

ところが,今回の学会でSFBとTh17の関連が報告され,「私は目から鱗がとれる」ような思いをした。細菌学のアプローチでは解決ができなかった謎が,免疫学的なアプローチで解決されたのである。SFBがいるとTh17を介した感染防御が活性化されることが解ってきたのである。SFBのどのような分子が宿主免疫系の活性化に関わるのか,解決されるべき点が残っているが,SFBは将来,プロバイオティクスの大きな市場を形成することは間違いない。EPEC感染において,SFBが感染防御に関わることを10年ぐらい前に明らかにしていたが,そこには概念はなかった。今は,はっきりとした答えに向かいつつある。

自分にとって,SFBは悪夢であったが,人類に貢献するかもしれないです!

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あ,あと俣野哲朗先生のところの武内さんに,腕相撲で負けました。武内さんはトビー・マグワイアに似ている甘いマスクの好青年です(映画スパイダーマンの主人公)。ブラジリアン柔術でならしてきた俺が負けるわけはないと思いましたが,あっけなく負けました。菊谷先生のところの安居さんも,自転車でならしている堀口さんも,轟沈しました。。。ということで,40代の研究者には課題が残されたAIFIIでありますが,これからも進化していきたいと思います。