大学の評価委員を担当したとき,膨大な資料がワードで送られてきました。A4 フォーマットで 100 ページ以上の書類です。その文書はスクロールするだけでワードがフリーズしてしまい,仕事以前の問題でイライラしたのを記憶しています。なのでワードは速攻で却下しました。 人間とアプリにも相性があると思います。。。
最終的に,エディターなら使えるんじゃないかと思い,探しまくりました。その結果,日本語版にもなっていない Scrivener というアプリを発見し「これだ!」と思いました。
Scrivener はもともと,脚本などを作成するときのアプリとして開発されただけあって,「書くことへの異常な執念」が感じられるアプリです。僕は下記に示す3つの点で,このアプリを溺愛しております。
1 何でも取り込んでしまう汎用性
Scrivener の最大の特長は,どんなファイルでも取り込んでしまう汎用性にあります。たとえば,参考書やレビューを執筆するときにホームページに公開されている情報や,PubMedで検索してダウンロードした論文PDFを資料として頻繁に見ることがありますが,Scrivener はどんなタイプのファイルでも取り込むことが可能です。
WebページもPDFも何でも取り込むのが,このアプリの凄いところです。ちなみに吉森 保先生のHPを取り込んだところです。 |
資料はいつも手元にあり,書きたいときに何処にいても書けるのが,最大の魅力です。また,Scrivener のファイルは Doropbox で同期することができます。ラボのデスクトップで執筆して,自宅の MacBook で継続することも可能です。〆切に追い込まれても大丈夫です(笑)
2 画面分割モードで仕事する
Scrivener のなかで僕が最も気に入っている機能として,画面分割モードがあります。原稿は左側において,参考文献やイラレで作成した図は右側において仕事をしております。Scrivener のプレビューモードは素晴らしく,イラレを立ち上げる必要もありません。また,イラレをインストールしていない MacBook でも,イラレで作成した図の閲覧は可能です。
左の画面に原稿をおいて,右側に図や資料を置くことが可能です |
いったん資料を Scrivener のなかに入れてしまえば,「他のアプリを立ち上げることなく執筆作業に集中できる点」が優れています。複数のアプリが立ち上がって,ウインドウが重なり合うこともありません。
3 強力なコンパイル機能
「もっとよくわかる! 感染症」の場合,各章は 10000 字を目安として執筆しましたが,出版社に原稿を送るときには章立てしたものをコンパイルすることが可能です。
たとえば,1章から 10 章までのテキストファイルを1つのワードファイルとして束ねることが可能です。ワードにはこのようなコンパイル機能がないので,ボリュームの大きなファイルを扱うときに不便です。
必要な書類のみを選定してコンパイルすることが可能です。 |
「もっとよくわかる! 感染症」を単著で仕上げるためには,作業環境の効率化を余儀なくされました。そこで出会ったアプリが,Scrivener でした。日本語版はありませんが,日本語環境で何の問題もなく動作します。現在,App Store での購入も可能です。
Scrivener は全ての資料を飲み込むので,1ファイルで 2 Gb ぐらいになることがあります。なので,Dropboxには課金しております。クラウドへのアップロードは,変更した書類のみが書き換えられるので,モタモタすることもありません。
ということで,すべての研究者に使って欲しいアプリだと思います。そして,念願のScrivener の参考書も出版されております。
ここまで環境が整ったいま,使わない手はありません。