論文を書き上げていく段階で一番難しいのは,おそらく「ディスカッション」部分だと思います。次に「アブストラクト」かもしれません。今回は論文構成のなかでも鬼門である「ディスカッション」について,解説していきたいと思います。
ディスカッションでの致命的なミスは,「Results」セクションで言い尽くしたことを,ダラダラと重複させることです。もし,あなたが初めてディスカッションを書くのなら,以下に解説することを念頭に置くと良いかもしれません。
大御所のPIも失敗する部分ですから,気楽にいきましょう(笑)
【イントロとディスカッションは対象的である】
「イントロ」はすごく大雑把な一般的知識からはじまって,徐々に専門的な領域に移行していきます。一方,「ディスカッション」では,専門的な話からより普遍的な事象にフォーカスを合わせていきます。
イントロとディスカッションは対象的な構成をなす |
次に,自分たちの「新たな発見」がこれまでに報告されていることと,どのように違うのか,他の論文を引用しつつ,自分たちの発見をアピールしていきます。
また,新たな発見から,どのような発展が期待できるのか? それと社会的意義について述べることも大切です。僕の研究領域なら,新規病原因子の解析を進めることで,新規創薬のターゲットになりうるとか,ワクチン創生につながるとか,,,そんなところに焦点をあてます。
ディスカッションなので「今後の研究の展開」も述べることも大切です。しかし,過度の推論は控えたほうが良いでしょう。あまりにしつこいと,「じゃあ,その実験もやれよ!」と,査読者に突っ込まれます。
ディスカッションのなかで,言葉選びにとても慎重になる部分があります。それは,既報の研究結果と異なった事実を提示する場合です。研究領域は狭いので,「競合グループに査読されることがデフォルト」だと思って書く必要があります。実験で得られた事実を強調するのは大切ですが,◯◯の研究手法が異なったので,違う結果が得られたのかもしれない,,,とか,「相手に逃げ道」を作ってあげることも重要です。
どっちのデータが正しいのかは,研究が進めば解ることですからね。
【終わりよければ全て良し】
「ディスカッション」の最後の段落は,論文で最もアピールしたい部分を簡潔に述べてから,今後,突き詰めるべき課題・問題点などを提示しつつ,将来的な展望を明るく提示して終わるようにしています。将来的な展望が長すぎても,「そんなに言うのなら,実験しろ」と査読者に突っ込まれますから用心する必要があります。
最後の段落は,ほぼ決まった書き方なので,関連論文を読むことでなんとなくスタイルを理解できると思います。
【まとめ】
イントロとディスカッションの書き方は対照的です。この対照的な部分をしっかりと頭のなかに入れて書くことが大切です。下図に「ディスカッション」でよく使われる決め台詞を並べてみました。ご参考になれば幸いです。
ディスカッションとイントロで頻出する決め台詞 |
上記の内容は,拙著「ライフハックで雑用上等」から,一部,転載引用したものです。