前回,区切りをつけたつもりでしたが,このブログだけで「何とか論文だせる」ぐらいに完成度を上げていこうと思いました。山岳ギアの解説に戻るのは,もう少しあとにしたいと思います(笑)
さてこれまで,論文作成におけるフォーマットについて解説してきました。また,各セクションで使われる「決まり文句」についても例をあげてきました。
しかし,修士2年で「英語論文を書け!」と言われ,筆者が面食らったように,はじめて論文を書く場合は,「具体的にどうやって書いていけば良いのかわからない」という根源的な問題に突き当たります。
筆者は福島の片田舎で育ったので,「おそらく英語を使うのは,ハワイか何処かの新婚旅行のときぐらいだろう。。。そんなに使うことのない言語に時間をかけるのは意味がない」と真剣に考えておりました。実際に中学校から高校まで,英語は5段階評価で「3」以上取ったことがありません!
それで修士になったときに,「実験は好きだけど,英語で論文を書くのも研究稼業に含まれるのか」と憂鬱になったことを記憶しております。
しかし今は強力な解決策があります。それは,ライフサイエンス辞書(Life Science Dictionary, LSD) を徹底的に利用するという戦略です。この LSD プロジェクトは金子周司先生 (京都大学大学院薬学研究科生体機能解析学分野)が中心となって運営されており,多くの研究者がお世話になっているサイトです。
僕が言うまでもなく,このプロジェクトがライフサイエンス界に果たしている役割はとても大きいと思います。
LSD を利用するにあたり,やはり重要なのが論文の多読です。自分の関連領域の論文を徹底的に読んで,そこで使われる単語を覚えることは研究者として生きていく上で重要なスキルです。
たとえば,「エフェクター BspR は III 型分泌装置を介して核に移行する」という英文を書くときに重要なのが,「translocate」という単語を覚えているかどうかです。
逆にあなたが「translocate」を覚えていれば,LSDの威力をフル発揮することが可能です。まず,WebLSDを訪れて「translocate」を入力します。
ライフサイエンス辞書のトップページ |
「コーパス」をクリックすると「translocate」を使用した例文が,映画マトリックスの武器庫のように,ずらりと表れます(下図)。
コーパスをクリックしたときにあらわれる画面。 |
ここでカラムの上にある「1語後でソート」をクリックすると,どのような言葉が「translocate」のあとに続くのか,アルファベティカルオーダーで並びます。
「translocate」のあとに前置詞「into」がくると覚えていたら,かなり正解に近いところにいます。また,検索で「nucleus」を探しても良いかもしれません。
「1語後をソート」したときの画面。translocate のあとに,どのような前置詞がくるのかを体系的に見ることができる |
僕の場合,「the」とか「a」の使い方はミスをすることが多いので,論文ができたら外部サービスに英語校正を依頼してます。「洗練された論文」として,時間をかけて仕上げるよりも,「一ヶ月ぐらいで仕上げる覚悟をもつ」ことが大切だと思います。
最終的にに英文校正サービスの会社に出すのですから,細かいところで時間をかける必要性はない,と割り切ってます。
論文数は,なんだかんだ言って重要です。科研費申請には最低でも2年に1報は主論文がないとキツイですよね。。。それほど論文を書いてなくても採択される研究者もおりますが,それは「神の領域の事象」であって,はじめからそこを目指すと研究という領域から離れることになります。
閑話休題。とにかく,Web版 の LSD を使いまくることで,なんとか論文を仕上げることが可能です。はじめて論文を書く場合は本当に時間がかかりますが,何報か出し続けていくことで,自分なりの文体を確立する日が必ずくるはずです。
何となく書けそうな気がしませんか?
頑張ってください☆