2010-10-06

ノーベル賞はとれなくても

ノーベル化学賞,日本人が受賞しましたね。受賞された方々に直接会うことはおそらくないかと思いますが,受賞対象となった反応系は色々な分野で使われているのでしょうね。有り難うございます!


さてさて本日は,リジェクト喰らった論文を書き直して,最後の詰めについて,講師の桑江君と相談しました。できあがった図を俯瞰して,何となくディスカッションが始まりました。少し改良を加えた図を見ながら,桑江君(以下K)の突っ込みが入ります。Aは私です。


K: この図の流れ,やっぱり,おかしいっすよ。
A: そうっかなあ。
K: じゃあ,説明して下さいよ。
A: ええと,炎症反応には○○が関与していて,,,
K: ほら,○○の説明が最初に来るじゃないっすか?
A: あっ,ほんとだ。
A: じゃあ,この図の順序を入れ替えようか。
K: そうっすね。
A: ああ,ほんとだ。こっちのほうがはるかにいいなあ。


こんな感じでざっくばらんに,論文が最終段階に近づいていきます。少ない人数だからよけいに会話量を多くして,ああでもないこうでもないと練る必要があります。話すことで,他の人に聞いてもらうことで,軸がぶれない論文に仕上がっていきます。だからどんな論文でも愛着があります。どんな論文でもシャンパンで乾杯。本日の改訂論文も何となく居心地の悪い部分が霧消し,きちんとした,まっすぐな道が見えてきました。すごく嬉しかった。僕一人では行けなかった境地です!
結局,僕がしたいのは論文を出すことではなく(今の心境として),論文を楽しく作っていく,このワクワク感を皆で共有したいのです。ということで,修士・博士過程を考えている学生さんがいましたら,是非ともラボへ見学に来て下さい。感動を共有しましょう! ただし,研究成果を論文に仕上げるのには,かなりの修練が必要です。遠回りすることはあっても近道はない世界です。だからそれなりの覚悟は必要だと思うのです。


こんなことを書くと厳しいラボだなと思われますが,僕のラボが厳しいのではなく,研究を生業としてやっていく世界が厳しいのです。しかし僕のラボをでたら,細菌学の領域では,何処へ行っても通用すると風呂敷を大きくひろげておきます(笑)。
こんなことを言っても,僕は人を育てることはできないと断言しましょう。伸びる,伸びないは,あくまで自発的な行為であり,僕は学生さんやスタッフの研究環境を与えるに過ぎないのです。とりとめもないのでこのへんで。


「それを作れば彼はやって来る」  Field of Dreams