この取りまとめでは,「曝露状況調査票に記載のある O157 VT2 タイプの遺伝子型分析の結果,7月17日から9月1日までに発症した 141 件のうち 116 件の菌株情報が判明し,91件が同一遺伝子型であった」との報告です。
しかも下図のように,同一遺伝子型O157VT2による患者の発症事例では「惣菜チェーン店」の食中毒事例よりも,先行して散発事例のピークが認められます。この時点で,惣菜チェーン店云々の話ではなく,もう少し生産者に近い上流の汚染の可能性を検証すべきでした。また,広域にわたり同一遺伝子型が検出されていることから,二次感染によるO157 の拡大も考えられます。
厚労省「腸管出血性大腸菌感染症・食中毒事例の調査結果取りまとめについて」より転載引用 |
汚染源となりうる生産者サイドは農水省の管轄ですから,厚労省と農水省の情報共有も重要だと思います。これについては,今後の対策で「情報提供の一元化及び関係機関における提供した情報の共有」とかかげられております。O157 遺伝型の速やかな情報共有は,感染源の特定にとても重要です。
今回の事例では,結局,感染源を特定することができませんでしたが,O157 の感染事例は後を絶たないので,今後のサーベイランスの徹底に繋げてほしいです。