いかに効率よく「重ね着」するかで,荷物の容量も大幅に変わります。心配すればそれだけ持っていくものが増えていきます。逆に,軽装で凍死することは避けなければなりません。
山の服装のレイヤーは4つのカテゴリーに分けることができます。すなわち,1) ドライレイヤー,2) ベースレイヤー,3) ミッドレイヤー 4) アウターレイヤーです。面倒くさそうですが覚えてしまえば簡単です。それよりも意外とお金がかかります。
山の店に行く前に,「今日はこれを買う!」という強い意志がないと,ついつい余分なものまで買ってしまいます。
ここでは主に冬のレイヤリングについて解説していきたいと思います。とは言っても,低山の冬が自分の守備範囲だと思っています。それでも吹雪かれると心臓がドキドキします。
1) ドライレイヤー
肌に一番近いところに着るもので,かいた汗が肌と密着するのを防ぐためのレイヤーです。身体が濡れた状態で風に吹かれると体温が急速に奪われます。高価なハードシェルよりも,ドライレイヤーがいちばん重要だったりします。僕はファイントラックのアクティブスキンというドライレイヤーを上下で愛用しています。また,スキンメッシュソックスクルーもオススメです。足のムレが軽減されるので通年使用しています。ドライレイヤーは大量の汗をかく夏場にも必要です。ちなみに春から秋にかけてはミレーのドライナミックメッシュを使用しています。
2) ベースレイヤー
ベースレイヤーには速乾性の化繊と,速乾性は劣るけれども防寒性に優れるメリノウールがあります。あるいは化繊とメリノウールのハイブリッドです。ベースレイヤーで汗を吸って肌に戻さないようにするのが理想です。メリノウールは吸湿しても暖かいという特性をもっています。また,化繊と比べて防臭性も優れています。僕は年間を通じてメリノウールのベースレイヤーを使用しています。冬場に愛用しているのはモンベルのスーパーメリノウールの長袖でコスパが非常に良いです。あと,パタゴニアがリリースした Merino Air Hoody はシームレスな編み方でとても興味があるのですが,値段が少々高価です。
3) ミドルレイヤー
ミドルレイヤーはベースレイヤー部分の汗を効率よく外へ追い出すことと,アウターレイヤーとベースレイヤーの間に空気のロフトを作って体温を維持することにあります。
春から秋にかけてはフーディニのアルファフーディーを愛用していますが,冬場はアウトドアリサーチのDeviator Hoody を着用しています。このフーディーは前身ごろの部分をポーラテック社の最新素材であるPolartec Alpha インサレーションを使用しており,透湿性と速乾性に優れています。また,フードと袖の部分は通気性に富んだPolartec Power Dry High Efficiencyとよばれるフリースを使用しています。まさに,最先端の素材を惜しげもなくつぎ込んだのが,このフーディーなのです。汗のコントロールに優れているので,とても気に入っております。 アウトドアリサーチの製品はもう少し評価されていいと思うのですが,こちらも希少生物的な扱いです。また,Deviator Hoody で少し肌寒いときはアークテリクスのAtom SL Hoodyを重ね着しています。春から秋にかけては多少の雨もはじいてしまうAtom SL Hoodyをアウターレイヤーとして使用することが多いです。
僕はフリース独特のこもるような熱気がとても苦手で,この2枚の重ね着で調節しています。特に冬場は,快晴とブリザードの日では驚くほど温度域が異なりますから,この2つの重ね技で,調節しています。
3) アウターレイヤー
アウターレイヤーにはハードシェルとソフトシェルがあります。これらの違いについては,ギアジンさんのHPに詳しくまとめられております。
Outdoor Gearzine
冬場の積雪期に求められるのは,ハードシェルのジャケットです。ハードシェルは雨や雪を完全に凌いで,また,積雪時の滑落に対応するために生地も厚く滑りにくい素材です。レインウエアは代用にもなりますが,表面がサラサラしているので滑ったときのことを考えると怖いです。
僕が使用しているのは,ホグロフスの ROC Spirit Jacket です。Gore-Tex Pro 3 Layer という素材を使用しています。ゴアテックスファミリーのなかでも最高強度を誇りますので,過酷な状況に対応するジャケットに多用されています。レイヤーのなかでは一番,お金がかかります。。。
ホグロフスのROC SPIRIT JACKET |
また,パンツはホグロフスのリザードパンツを使用しています。撥水性もそこそこあってストレッチ性に優れています。冬場にはこれにGore-Tex Pro 3 Layer を使用したモンベルライトアルパインパンツを重ね着することで雨や雪を防ぎます。さらに,膝までのゲイターも着用して雪の侵入を防ぎます。
4) テント内にて
テント内ではマウンテンハードウエアの Stretchdown RS Hooded を使用する予定です。この製品は買ったばかりで,まだ野外で試しておりません。今まで,パタゴニアの初代ナノエアーを使用していたのですが,かさばるので羽毛に変えました。羽毛の最大の弱点は濡れるとロフトを失うことです。この理由で僕はこれまでダウンを利用してきませんでした。このジャケットの最大の特長は,ストレッチ性のある素材に撥水処理をしたダウン(Q.Shield DOWN)を詰め込んでいることです。このダウンについては改めてリポートします。
ここでは冬場のレイヤーについて解説しました。色んなものを揃える必要がありますが,山に登っていくうちに徐々に取捨選択できるようになります。過去に僕は4月の磐梯山に木綿のTシャツを着て登って,ほんとに泣きそうになったことがあります。ドライレイヤーとベースレイヤーは汗をコントロールするためにとても重要です。ここにはきちんとした投資が必要です。
また,レイヤーのなかで一番たいへんなのがミドルレイヤーです。ある程度の通気性を確保しないとすぐに汗が出てきます。なので,行動量や外気温にあわせ薄手の素材の重ね合わせで温度をコントロールしています。
もちろん厳冬期の冬山では上記装備よりシビアになるでしょう。また,東北と秩父の山では同じ2000 m でも装備は全く異なります。ここでは,僕がたどり着いたレイヤリングシステムについて,ざっくりと解説しました。
低山の冬山でも,GPSならびにヘッドライトは2つ装備しています。また,ツエルトも必携です。装備も膨れ上がるので,初期投資が大変です(笑)
GPSウオッチについては↓もご覧ください。
遭難する前に,スント トラバースアルファに山小屋の位置情報を入れておく
ここまで書いてきて言うのも何ですが,山登りをはじめるのなら,5月の連休を過ぎてからでしょうか。。。
4月はじめの磐梯山。途中から雨が降ってきて,ずぶ濡れになりました。ここでの失敗が大いに勉強になりました。 |
これは2016年5月の連休の吾妻山です。5月でも山域によっては厳冬期並みの装備が必要となります。この年は雪が少なかったのですが,吹雪いて10 cm ほどの新雪が積もりました。 |
それではよい山行を!
追記: ミドルレイヤーについてはこちらでも取り上げております。