気がついたら僕は,同じ職場で30年働いていました。20代はじめから働きだして,もう50代のなかばになろうとしています。こういった真面目な僕?に,30年勤続したから5日間連続で休みなさいね,と大学から通達がきました。土日をあわせれば,かなり長いあいだ山にこもることができます。
もう行きたい場所は決まっていました。それは,日本アルプスの最深部に位置する雲ノ平という秘境です(地図☆印参照)。
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雲ノ平の位置を☆印で記載しました。 |
富山県折立まで電車とバスを乗り継いで,ひたすら移動の旅でした。それでも今回は一緒に行動してくれる友人がいたので,とても楽しかったです。
折立から薬師岳の麓にあるテント場について,初日の宿泊です。テントはかなり混んでいました。
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薬師峠のテント場にて。今回はシングルウオールのテントで軽量化をはかりました。 |
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水が豊富です。 |
翌日は,太郎平から薬師沢に降りて,黒部川を横切ります。その前に,薬師沢小屋から黒部川に降りて,冷たい川の水でリフレッシュしました。
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薬師沢小屋から黒部川までは階段で降りることができます。僕と友人はここでしばらく洗濯をしてリラックスしました。 |
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黒部川。左上に薬師沢小屋があります。雲ノ平には赤い吊橋を渡っていきます。 |
薬師沢から吊橋を渡ると,雲ノ平に至る登山道が見えてきました。しかし,ここからは急登で,GPSアプリで等高線を何度も確認してしまいました。しかし,視界が急に明るくなって,雲ノ平の縁にたどり着いたことを知りました。
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ようやく見えてきた雲ノ平。 |
雲ノ平山荘でテントの受付をして,友人とビールで乾杯しました。二泊目は雲ノ平のテント場です。テント場にはビールがなかったので,また歩いて山荘まで行って,午後3時ぐらいの素晴らしいひとときをビールを飲みながら過ごしました。
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雲ノ平山荘。 |
翌日は,鷲羽岳を経由して黒部五郎岳の麓にある黒部五郎小舎を目指しました。
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鷲羽岳,一瞬だけ晴れました。 |
小屋がかなり下ったところにあるので,明日の急登を思うと,少しだけ憂鬱になりました。
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なかなかたどり着けない黒部五郎小舎。 |
テントを設営した後,黒部五郎岳を目指しました。あいにくの雨で頂上についても何も見えませんでした。登山靴のなかにまで浸水してきて,カエルのような気分でテント場にたどり着きました。小屋のストーブで暖をとるだけではアレなので,友人が生ビールを買ってくれて,ベビーラーメンを肴にして,乾杯しました。夕方には雨が止んでいましたが,寒いので,そそくさと眠りにつきました。
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お世話になった黒部五郎小舎。 |
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テント場も快適でした。 |
翌日は,快晴のなか三俣蓮華岳を目指しました。
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テント場からの風景。遠くに笠ヶ岳が見えます。 |
三泊目に突入するのですが,疲れはほとんどなく最高の気分でした。三俣蓮華岳の頂上からは槍ヶ岳もくっきり見えて,かなり長いあいだ,頂上で過ごしました。そこから稜線をのんびり歩いて,双六岳へと登りつめました。青空を燕が風を切って飛んでいます。その風をきる音が聞こえるのに少し感動しました。ここの頂上でものんびりと過ごしました。
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双六岳頂上での友人。遠くに槍が見えます。 |
ここから双六岳のテント場へは,なだらかな稜線上を進んでいきます。
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双六岳から双六小屋を目指す。稜線はなだらか。槍ヶ岳は雲に隠れてしまった。 |
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気持ちのいい稜線を歩く。 |
双六小屋のテント場は柔らかな砂地で,とても寝心地が良いです。いつの日か,ここをベースにして,槍ヶ岳,水晶岳へと足を伸ばしたいです。明日は下山なので,友人と生ビールで乾杯しました。思えばビールを飲まない日はありませんでした。
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ロケーションも最高な双六小屋のテント場。 |
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キンドルで読書をしながらのんびりと過ごす。 |
日が沈むと急に温度が下がり,双六小屋でカレーうどんを食べたあと,キンドルで池澤夏樹の小説を読んでいるうちにいつの間にか寝てしまいました。
帰りは新穂高ロープウェイを目指しました。ここからバスに乗って,松本駅にたどり着きました。こうやって僕の勤続30年記念登山の第一部が完結しました。
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グラナイトギアの軽量パック。バルトロよりも1.5 kg ほど軽い。 |
まだ四泊五日の縦走をこなせることに感謝です。今回は,テントもシングルウォールの軽量なものにして,極力軽量化を図りました。最終的には10キロちょっとの重量に抑えることができました。ただし,シュラフの適温はプラス7度のもので,ここは軽量化(約400 g )しすぎたかなと思いました。夜中に寒さで何度も目を覚ましました。こういったことをフィードバックして,東北のアルプスへ向かうことになります。
どうして旅に出かけるのか?と聞かれることがありますが,映画「Into The Wild」のなかでの言葉に集約することができます。自分を試すことにあります。
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わさび平にて。 |
人生において必要なことは,実際の強さよりも強いと感じる心だ。
一度は自分を試すこと。一度は太古の人間のような環境に身をおくこと。
自分の頭と手しか頼れない,過酷な状況に一人で立ち向かうこと。
Into The Wild