韓国の古都・扶余というところで,韓日微生物学シンポジウムが行われました。日本側のオーガナイザーは細菌学会理事長の神谷 茂先生(杏林大学)で,スピーカーとしてご招待頂きました。また,細菌学会国際交流部会担当の桑野剛一先生(久留米大学),神谷先生のスタッフには,細々としたアレンジを行なっていただきました。ありがとうございました!
羽田から飛行機にのって2時間弱で金浦空港につきました。そこから扶余までマイクロバスで移動したのですが,韓国の運転手はものすごく飛ばしますね。生きた心地がしませんでした。シートベルトに自然に手が伸びていきました。
そして,怒涛の2日間でした。帰りの飛行機のなかで,機内食をつつきながら,ビールを飲まない理由はなかったので,ちびちび飲みながら,僕なりに現状分析を行いました。
結論として,日本細菌学会を母体としている細菌学関連(他の基礎系はあまり知らないので)の研究は,ぎりぎりで韓国と同じラインで並んでおり,あと数年後には確実に追い越されるかも? と思いました。そういった勢いを,確実に感じたのです。また,韓国では若手研究者がはやくから独立したポジションについて,良い研究をしているのが,はっきりとわかりました。また,研究の切り口にしても,旧来にこだわらない攻め口を展開していると思いました。僕は4年前に同じ学会に参加したのですが,正直言って,上記なようなことをまったく考えもせずに帰国しました。しかし,このころから韓国側での構造改革が確実に進んでいたのでしょう。
日本細菌学会でも「細菌学若手コロセウム」などを積極的に支援し,若手研究者の育成に取り組んでいますが,もう少し突っ込んだところでの改革が必要なのかもしれません。韓国では,サバティカル制度を含めて米国型の研究体制を敷いているようですし,システム的なものが,じわじわと,効いてきたのでしょうか。あるいは根性でしょうか。このへんについては,もう少しリサーチしてみます。
今回は,久留島君(現:群馬大学医学部)が発見したボルデテラ属細菌の分泌性転写調節因子BspRをメインに発表しました。III型分泌装置によって分泌される因子が,菌体内のタンパク質発現を含めて,何故,グローバルに調節しているのか? について興味があります。このへんについては,さらに踏み込んでいく必要があると思っています。
会期の2日間,結核の研究をされている松本壮吉先生とじっくり,お話をする機会を得ることができました。また,東大医科研の笹川千尋先生とは羽田発着のフライトでしたので,空港のラウンジで,かなりまとまったお話を伺うことができました。研究の進め方,PIのあり方,論文でのプレゼン方法など,とても刺激的でした。ちょっと蒸し暑かったので,僕はかき氷を注文したのですが,僕が想像していた大きさよりもはるかに大きく,話している内容と,かき氷が妙にアンバランスでした。
あと,面白かったのは,僕の拙い韓国語で若手研究者に色々と伝えようとしましたが,まったく通じませんでした。最後にわかったのですが,ベトナムからきている留学生でした。。。どうりで蔘鶏湯とか景福宮とかいう単語がわからないのも,理解できました。ビビンパを遠慮しながら,混ぜていると,もっと混ぜろと言われたのも,良い体験でした。
2年後には,同シンポジウムが日本で開催される予定です。僕らのラボでは,どんな研究が進展しているでしょうか? 百日咳は世界レベルで増加傾向にあるので,何とかそれを止めるような未来を,見ています。