2008-03-21

卒業おめでとう

僕は修士を卒業して,北里研究所に入った。

博士課程にも行きたかったが,正直,勉強にはうんざりしていた。
金を払ってまで,勉強はしたくはなかった。だから就職した。当時の北里研究所は給料が安く,しかし,給料の安いところにはきっと何かがあるだろうと思って,北里研究所に入る事にした。

やはり北里研究所はすごいところで,いきなり慶応大学医学部・微生物学教室に出向。右も左も判らず,辛かった。何よりも辛かったのは,これから,自分が何をやるのか判らなかったことだ。しかし自信のないまま,酵母における転写系の研究でようやく光がみえてきた頃,相模原の医学部に出向命令。。。

今度は移植免疫の世界へ。週末はやり残していた慶応の仕事のために,相模原から信濃町まで直行。だから週末は気合いが必要だった。地獄だった。。。僕の唯一の夢は,いつかは慶応の仕事も,相模原の仕事も終わる日がくる。いつの日か知らないけど,きっと論文になる日がくる。それだけを信じて,淡い期待のなかで,苦痛のなかで,20代後半を過ごしていた。今の自分が20代に戻ったら,絶対,研究者にはならなかったはずだ。だから今の自分が,ここでこうして研究者でいられる事に感謝の念を感じざるを得ない。あのとき,どのひとつでも,パスしたら今の人生はない。自堕落な人生の延長に,僕の貴重な,今の人生がある。

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ともかくも沖に出よう。次の波は待たない。

ともかくもだ,今の波に乗ろう。 

ご卒業おめでとう。

2008-03-18

感謝

ある総合格闘技ジムのロッカールームでの会話


「怪我とかしているとさあ,何でこんなときに怪我したんだよ
と,怪我している部分にあたるじゃん」と,Sさん。


まあねと皆が聞いている。


「ほんとは怪我している部分に感謝しなくてはいけないんだ」と,Sさんが何かの本を読みながら,皆に言い聞かせている。「怪我してるってことは,体の中でいちばん頑張ってくれた部分だろ。だから怪我した部分には感謝しつつ治していかないとな」と,Sさん。ほほうと,皆。「ということで,今日から俺をトップアスリートのSと呼んでくれ」と言いながら,Sさんは高気圧チャンバーカプセルに消えていきました。


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結局,Sさんが読んでいたのは何の本だったのか判りませんでしたが,皆,何らかの怪我を背負いつつ,総合格闘をやっているわけで,「怪我をしている部分に感謝」という部分は,なるほど納得しましたね。怪我だけではなく,どんなことにも「感謝」の気持ちは大切なのです。喧嘩ばかりしている俺が言えた事ではありませんが,俺が自分のラボをもってここまで来れたのは「運」も大きいですが,やはり色々な方々との出会いがあって,ここまでこれたのだと思います。Sさんの会話で感じたのは,自分が不満だと思っている現状は,実は「不満」ではなく「感謝」として見れる部分はないのか? 本当にないのか,ポジティブに見つめ直すという気持ちが大切だと思いました。研究者は物事を様々な角度からああでもないこうでもないと視るプロでなければならないのに,ちょっと反省です。

2008-03-14

第5回 森村豊明会奨励賞: 片桐岳信先生

第179回北里研究会にて,第5回森村豊明会奨励賞受賞者特別講演会がありました。今回の受賞者は,埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの片桐岳信先生でした。受賞内容は「骨誘導因子(BMP)シグナルに基づく生理的および病的骨形成の解明」です。

僕がM2のときに,片桐君は3年生で,研究室が少しだけだぶりました。清潔そうな白いシャツにジーンズ,それにスタジャンというスタイルで,テニスが抜群にうまい好青年でした。その片桐君にプラスミドの構築を少しだけ教えました。彼はどんなに小さな実験でもすごく愛着をもって実験をしていました。なんと,当時の彼の研究内容も骨誘導因子(BMP)でした。彼は実直に研究を進め,というよりは愚直に研究を進め,骨形成の世界で重要な成果を出しております。修士のテーマにしては壮大すぎると思いましたが,彼は機関車のように前進し,今の地位を築いております。

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片桐先生は,昨年,教授に就任され埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの牽引者の一人として邁進していくことでしょう。片桐先生は3つ年下ですから,気がつけば40を過ぎていることになります。講演会での見事なプレゼンを聞きながら,あっという間に月日が過ぎてしまったような感じがしました。自分と同じ大学の卒業生が頑張っているのをみるとやはり嬉しいですね。

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ということで,片桐先生をみていると,やっぱ,重要なのは明るく前進していく力だと思いました。どんなに優秀な奴でも自分で歩かなかったら研究は進まない。まあ,そんなの当たり前だと思うでしょう。でも僕は今まで飽きるほど,「それをやっても,こうなるって論文に出ているので,やってもしょうがないです」という台詞を何度も聞いております。歩き疲れたなかに研究の発見があり,歩かなければなにも得られない。一方,情報って,歩かなくても,今では図書館に行かなくても,とれるじゃないですか。調べるだけで,自己満足のなかでやったような,自分ではすごいことを知ったような気分になれるのが,今の時代の怖さだと思います。

片桐先生の講演を拝聴し,研究者としての原点をかいま見た感じがしました。

これからもお互いに頑張ろう!

2008-03-11

ロッカールーム

本日,ジムで軽めにスパーリングをこなしました。練習後,柔軟体操を少ししてからロッカールームへ。練習前のロッカールームは,みなピリッとしてあまり話をしませんが,練習後のロッカールームはリラックスした感じがします。テーピングをほどきながら雑談したり,プロテインを飲んでいたりと,一種独特な連帯感のようなものを感じます。ラボもロッカールームのように,緊張とリラックス,適度に混ざっていると良いですね。

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本日はハーフガードをパスされたときにカウンターでかけるチョークの練習を行いました。相手が越してきたときに,すばやく反転してチョークを極める練習を何度も行っています。非日常の動作を何度も繰り返し,それが日常の動作になること,これすなわち技の体得だと思います。

実験の精度を極めて行くことも,ある種の技の体得だと思います。

2008-03-10

研究者はどこだ! vol. 2

今回は,D. K. の話です。
D. K. は現在,米国で自分のラボをもって頑張っています。

D. K. はどうしてもあるラボにポスドクとして入りたかった。しかしラボのボスはイエスと言わなかった。業績がないとか,そんな話だったと思います。でもD. K. はどうしても入りたかったわけ。それでどうしたのかというと,何と隣のラボへポスドクとして入ったのである(註1)。そんでもってそのラボの研究をしつつ,夜中は裏実験。そうやって2年ぐらい過ぎたときに大発見をして隣のラボにめでたくお引っ越し。まあ反則技と言えばそうだけど,こいつの情熱はほんとにすごかった。

ということで断られてからが,勝負!? 
以上,D. K. の話でした。

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註1: 目的地まで行けない場合は,とりあえず近くまで行ってみるのが冒険家だと思います。そして,IFの低い山ばかり登っていると,どんどん高い山から遠ざかっていきます。怖いですね。

2008-03-09

ミッドナイト・エクスプレス: 沢木耕太郎

沢木耕太郎氏の本を読んだのは,象が空を 1982~1992 (単行本) という本が最後であった。先日,旅の本をメインとして売っているお店で沢木氏の分厚い本を再発見。その場では買わなかったが,気になってアマゾンで購入。ミッドナイト・エクスプレス,かれこれ20年前に読んだ本であるが,偶然の再会。

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現在,ミッドナイト・エクスプレスを再読中。この本を読むと無性に旅にでたくなる。今では旅に出ても不安になったりすることはあまりないが,20代の頃は旅に伴う不安が新鮮であった。この不安に少しでも打ち勝とうとして無謀な旅をしたこともあったが,結局は不安に対処するすべを学ぶことはできなかった。


山も良く登った。一人で八ヶ岳へ。テントのフライを叩く風が五月蝿く,まったく眠れない。蝋燭の光で古本屋で買った夏目漱石の「坊ちゃん」を読んだ。深夜2時頃,風がぱたっとやんだ。今度は小動物が徘徊する音が気になって眠れない。単独山行は寝不足になりがちだ。北海道の礼文島では面白い体験をした。深夜になると何処からともなく演歌が聞こえてきた。不気味になったので意を決してテント外に出てみると,島の沖合にたくさんのイカ釣り船が出ていた。ライトが点となって海間に浮かんでいた。その漁船から演歌が風にのって聞こえてきた。正体が判ってしまうと,僕の周りには誰かがいるのだと思い安心して眠ることができた。また,この島の郵便局にて,職員兼主婦のおばさんが「これから何処へいくの」と僕に尋ねてきた。「別に目的はありません」と答えると「じゃあ,お昼を食べていきなさい」と。手紙を出すために寄った郵便局で,おばさんの家族に入ってお昼をごちそうになり,おにぎりまでいただいた。他人の優しさを感じるのも一人旅の良い点だと思う。


海外の一人旅は真剣に不安だ。国際学会でオランダ・ハーグに行った時に,ホテルは現地でなんとかなると思い,しかしそこが甘いところで,ヒッピーがたむろするような紹介所で2時間ぐらい並んで,ようやくホテルをゲット。けちったら手動エレベータの細長いホテルに紹介され,やばい,と思った。おまけにレストランのメニューがオランダ語でまったくわからず。しかしオランダのすごいところは,おいしい自動販売機があって,なかにはあつあつのコロッケのようなものが並んでいた。1ギルダーのコインを入れると小窓があいて,好きな食べ物を選ぶことができる。腹が減ったら自販機で補給。不思議な国だ。一方,東南アジアのある国でカレーを頼んだら,目の前にバナナの葉っぱを出され,大きなバケツからカレーとご飯をどさっともられ,それでおしまい。カレーは汁系だったので手ではちょっと無理と判断し,スプーンをもらう。またある場所では「おまえは日本人か?」と聞かれ,「そうだ」と答えると,「日本人には食事を出さない」と言われたことも。こんなとき,遠くへ来てしまったと思う。


食う・寝る・糞する,という習慣は,国よって随分異なると言うのを学んだのが20代であった。
結論として,絶対,20代には戻りたくはない(笑)。
まあけど,20代でしかできない事もある。
20代頑張れ! 俺は40代で頑張るぜ!

2008-03-08

恩賜上野動物園


本日,娘と一緒に上野動物園に行ってきました。私が初めて上野動物園に行ったのは,たしか幼稚園前だったと思います。あの頃は象の鼻にタッチできて,また園内にガチョウが放し飼いにされていて追いかけられました。すごく怖かったでした。

さて本日は快晴でした。上野駅の構内で羽二重団子を買って,そのとなりのパン屋さんでカレーパンとピーナツパンを買いました。それをブランチ代わりに動物園へ。国立西洋美術館ではヴィーナスの絵画の催しがありました。自販機で動物園の入場チケットを購入しなかへ。子供は無料なのが嬉しいですね。園内は梅の花が満開でした。気になっていた熊さんたちのコーナーはすっかり新しくなって,ほっとしました。あの一角だけ暗くて熊さんたちがかわいそうでした。今ではゴリラさんなみの待遇を受けています(笑)。あとはワシ・タカ類の猛禽類のケージをもっと高くして欲しいですね。上野動物園は少しずつですが新しくなっています。

娘の方はサル,ゴリラ,クマあたりを走り続け 2 周回ったところで疲れたらしく,いきなり家に帰りたいと言い出しました。まあ無性に走りたかったのですね。私の方も春の雰囲気を十分堪能したので,不忍池方面にむかって娘と歩き出しました。「あ,ボートだ。ボートに乗ろうよ」と言われ,まあ楽しいかなと思いボートに乗りました。娘が選んだのはスワンのかたちをしたボートでした。30 分間,池の上をぷかぷか漂いましたが良いエクササイズとなりました。ボートからおりた直後は,体の平衡感覚がぐらぐらしていました。これも,久々の体験だなと思いました。

私の方も本日は久々にリラックスしました。子供の好奇心に全部つき合うと,あっという間に疲れてしまう。こういった疲れは楽しいですね。

2008-03-06

うほっ

阪大で楽しく過ごさせていただいたので,論文の審査にも力が入るかと思いきや,「ええええっ,どうしてこんなレベルで出してしまうの」という内容であった。おまけに構成もひどいっ! 俺はネイティブではないから変な英語を読んでしまうと,自分の軸もずれてしまう。外人のくせに変な英語ってどうよ。でもさ,俺の友人でネイティブなのに each の単数扱い,そんなの無視ぶっちだった奴がいました。文法なんか関係ないもんねと,ネイチャーだしてましたけど。。。カナダのブリティッシュコロンビア大学の学生でも文法がかなりおかしいのがいました。そんでもって普段あまり話せない俺がなおしたりすると,真っ赤になって怒っていましたっけ。こっちも大学から給料貰っていたので,まあしょうがないですよね。なおしてあげるのは。。。おまけに「おまえ,筆記体で英語,書けるのか?」とマジで驚かれたりと。まあ日本人は不思議な存在なのです。それで思ったのだけれどネイティブでも論文書くの下手な奴いたし,ドクターコースあたりから急上昇して伸びていく感じですよね。この伸びる度合いが違うの。日本人,サッカーとか他のスポーツも含めて未成年あたりまでは,結構,すごいじゃないですか。でも,外国では未成年が夜遅くまで練習したりしないのです(親の保護が必要なので)。成人になってやっと一人で外出できたり,親の保護なしに夜遅くまで練習とかできるようになるから,そっから伸びるのだと思います。日本人は子供の頃に頑張り過ぎて社会に出る時までに疲れきってしまう。おおらかに伸びていかない。まあそんな感じがしますね。ぼろぼろだけどアップしまーす。

2008-03-05

たくさんの出会い

今週の月曜日は,もうじき新装開店するジムで練習。テレビ局の人たちが来ていて収録していました。昨日の「格闘王」というテレビ番組に自分の姿が 0.1 秒ぐらい映っていました。録画した静止画像で自己満足(山本選手と一緒に映っているので)。総合格闘技のジムも4年目。これからも進化していきます。

本日は,阪大微研にて細菌学会関連の打ち合わせ。堀口先生,とりまとめご苦労様でございました。会議が終わると,ちゃっかり阪大微研のセミナーに出席しました。飯田先生お誘い下さいましてありがとうございました。前から聞きたいと思っていた Feng Shao 博士の話をじっくり聞くことができました。エフェクターの機能を生化学的にどこまでも突き詰めていく。そんでもって菌属を超えてエフェクターの普遍性を打ち出すと言う手法です。Feng Shao 博士のような方が増えることで,私がドライと感じる領域が実直に解明されていきます。様々な研究戦略で,感染という現象が少しずつ明らかになっていきます。

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会議・セミナーの合間に,堀口先生のラボを拠点として,本田先生, 堀井先生のラボを見学。また石井先生にもお会いしました。私はラボのドアを開ける瞬間に感じる緊張感が好きです。そこで働く人たちのエネルギーを感じるだけでも良い刺激になります。話は変わりますが,私は電車の中で人物を観察するのが趣味です。あたりを見回して,エベレストを登頂するときに誰を連れて行くのか,乗客の中からピックアップします。もちろん声はかけませんが。「こいつは体力がありそう。でも極限状況下では利己的になりやすいから却下」とか,パーティーの編成に集中します。まあ,しかし悩む場合があります。そんなときは持ち物から感じるエネルギーで判断します。また,エベレスト遠征隊をくむ時とスーパーマーケットのお店を出す場合では,構成員が全く異なります。以前は研究室のスタッフ選びというのをやっていたのですが,集中しすぎて疲れるので,自分的にはありえない設定で楽しんでいます。

話を戻しますと,阪大微研のような猛者が集まる研究室は独特のエネルギーを感じます。

そのような英気を勝手に頂いて明日も頑張ろうかと思う訳です。

ということで今回の研究室訪問は阪大微研でした。

2008-03-01

研究者はどこだ! vol. 1

唐突ではありますが帯広畜産大学に行ってきました。Animal Global Health Seminar Consortiumで話をしてきました。世話人は嘉糠さん(原虫進化生物学研究分野)。セミナー後は根幹を突くような質問ばかりで,私にとってはスリリングなデフェンスタイムを楽しむことができました。

帯広畜産大学は,冬の寒い時期にも関わらず,とても明るい雰囲気で,研究棟のレイアウトも参考になりました。リラックスできるスペースも随所にあり,ホールも木のぬくもりが感じられ落ち着いた感じです。ここまでとは言いませんが,うちの大学ももう少し学生がリラックスできるようなスペースが欲しいところです。もちろん床は石タイルではなくサクラ材のような木の床が良いですね。どうも石の床は会話がまるくなりません。建物が活きてこない設計が多くの大学にみられますが,帯広畜産大学は違いました。

さてさて,嘉糠さんのラボなのですが,コンパクトにまとめられ非常に使いやすそうでした。若いスタッフと学生さんの熱気が感じられました。帯広畜産大学では他のラボと研究室や居室をオープンにシェアしており,こういったところも研究の活性化に貢献しているのかもしれません。このようなオープンなラボに今の生命研をリモデルするにはどれぐらいかかるか知れませんが,いいなあと思いました。ヒマそうな研究者も一目瞭然(笑)。

私から見れば「嘉糠さんは宇宙人のような方だ」と思っていましたが,じっくり話しあってやはり宇宙人だ!と確信せざるを得ませんでした。様々な分野の研究者を楽しく巻き込んで,大きく研究を広げていくパワーを感じました。私は嘉糠さんに連れられて色々なラボに行きましたが,コミュニケーション能力の凄さを感じました。また,嘉糠さんのご紹介にて福本晋也先生,川本恵子先生とお話しできたことも大きな収穫でした。

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嘉糠さんのずんぐりした大きな背中。あの背中はクマさんのようでしたね。学生さんもクマさんのような背中を見ながら色々なラボを紹介されて,大きな背中に安心してラボを決めてしまったりするのかも知れません。ということであの背中は反則技だと思います。嘉糠ラボの詳しくは ここ をクリックです。嘉糠さんのような研究領域で頑張りたい,かつ冬のスポーツも大好き(ちなみに夏はハイキング,カヌー,フライ,乗馬など),そして肉も好きだ(豚丼が有名)!という方にはイチオシです。もちろん,細菌感染制御学研究室もお勧めですが。

ということで「研究者はどこだ! vol. 1」は嘉糠洋陸先生でした。